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連載 第1回 日本全国の企業を支えるDynabook 地域に根差した営業活動の実態を探る 現場にある「答え」を見つけ、競争力を磨く

2025/08/28 09:00

週刊BCN 2025年08月25日vol.2072掲載

 世界初(1)のノートPCである「dynabook」は誕生から36年を数え、日本を代表するPCブランドとして広く浸透している。2024年度にはノートPCのブランド別で国内シェア1位(2) を獲得し、市場からの高い評価を裏付けた。そのブランド力の根源には、製品開発を支える技術力はもちろん、全国約50カ所の拠点で構成される営業・サポート網、さらには各拠点と深くつながるパートナーの存在がある。各拠点の実態を通じて、コンピューティングとサービスで地域の顧客を支え続けるDynabookの本質に迫る。

 第1回は、渋谷正彦取締役副社長、執行役員の武田篤幸・国内PC事業本部長が、Dynabookのビジネスの現状、地方拠点の意義、パートナー支援のあり方などについて語る。PCの販売にとどまらず、顧客と伴走し、課題解決に協力する中で、顧客から新たな気づきを得て、Dynabookは企業として、ブランドとして成長してきた。特に地域の拠点では、本部が示す方針に沿った事業だけでなく、各地の顧客が抱える固有の悩みを受け止め、共に解を生み出す活動に積極的に取り組み、会社の大きな柱になっているという。渋谷副社長は「答えは現場にある」と述べ、地域に根差した活動が競争力につながっているとする。

(1):1989年、世界初のノートPC「DynaBook J-3100 SS001」を発売
(2):「IDC Quarterly Personal Computing Model Analysis」(※)は、IDC独自の調査手法に基づき、各情報ソースのガイダンスを用いて、PC製品市場規模、ベンダーシェアの実績や市場予測を定期的に提供するデータベース製品です
※Source:IDC Quarterly Personal Computing Model Analysis 2025Q2 Share by Brand   ※2024年(1月~12月) ALLSegment合計。Dynabook社のシェアは14.7%

 

変わらないものづくりのDNA

 ここ数年、PC市場におけるdynabookの存在感が高まっているように感じます。その要因はどこにあると考えますか。

渋谷 2018年に東芝からシャープグループに移り、19年に社名を「Dynabook」に変更しました。ただ、私たちの会社としてのDNAは東芝時代も含めて、全く変わっておらず、常にノートPC開発の先行メーカーとして、いつの時代も、より軽く薄型で高性能、なおかつ、丈夫で長持ちを目指しています。言い尽くされたフレーズではありますが、基本は大切にしなければなりません。ものづくりのあり方は、資本が変わろうとも、DNAとして大切にしてきました。
 
渋谷正彦 取締役副社長

 その目的はやはり、常に、法人向けではお客様のビジネスに、コンシューマーであればお客様の使い勝手に寄り添い、一人一人のユーザーに満足いただける製品を提供し、きちんとサポートしていく。コンセプトは何も変わっておらず、そこからお客様の信頼を勝ち得てきたと自負しています。 

武田 私たちは開発から販売、サポートまでをワンストップで担っており、全国の営業現場で、いろいろなお客様の声をお聞きし、製品やサービス、サポートにスピーディーに反映することが可能です。例えば「dynabook X83 CHANGER」はバッテリーをユーザー自身で交換したいという市場ニーズをお客様からもパートナーの皆さんからもお聞きしたことを受けて商品化しました。
 
武田篤幸 執行役員 国内PC事業本部長

 そういった声をしっかりと聞き、それを製品やサービスに反映していく部分が評価いただいていると感じています。私たちはお客様やパートナーとの距離がかなり近い。それが一番の強みです。

 現状の体制になって以降の大きな特徴として、ソリューションビジネスがさらに加速した印象があります。

渋谷 そうですね。これもやはりお客様からの要望が一番にあります。PCを提供していても、例えばOSが勝手にバージョンアップするのを防ぎたいというニーズに応えて、サーバーを組んでアップデートを制御するというような、使い勝手の向上のために求められる事象が出てきます。そういった際に私たちでできる範囲をお手伝いしたことがきっかけです。

 最近では「Microsoft Intune」や「Windows Autopilot」を使いたい、セキュリティー対策を整えたいなどの要望が出ています。このようにPCを納めて終わりということではなく、そこから新たな課題が広がり、お客様とともに解決していったことで、ソリューション事業は大きくなっています。

武田 Autopilotへの関心が高まる中、お客様の期待に応えるため、導入を全力でサポートいたします。

 本格的な導入には事前の準備が必要となりますが、私どもだけではなく、多様な専門性を持つパートナーの皆様とも積極的に連携し、Autopilotの導入を実現していきます。

顧客の信頼を得るパートナーに期待

 パートナーとの関係強化、支援策についてもお聞きします。

渋谷 日本の商慣習として、馴染みの会社、それは「御用聞き」という意味ではなく、自社のことをよく理解しているSlerや販売店の担当者から買いたい、その人が進めるものなら信頼できるから間違いない、ということがよくあります。

 お客様と絶対的な信頼感でつながっているパートナーに私たちの製品やサービスを選んでいただけると、ビジネスがとても早いです。こちらが働きかけなくても、パートナーがお客様にいろいろと提案してくれるのです。

 国内ビジネスについては、パートナーによる販売を軸に考えています。国内で1000人前後の従業員しかおらず、営業は500人程度です。全てのお客様ときっちり向き合うことは残念ながら難しい。

 やはり全国各地の、お客様からの信頼が厚いパートナーの皆さんに向けて、製品の良さをアピールし、サポートにもしっかり対応することをお約束する。それによってパートナーにお薦めいただく。これが基本だと考えています。

武田 支援に関しては、25年度の後半に向けて新製品、より売りやすい製品を提供し、ラインアップの強化を進めます。その中でPCの新たな需要をパートナーとともに捕まえていきたいです。また、GIGAスクール構想の第2期もかなりの需要があり、重要になってきます。「dynabook K70」といった子どもたちに人気な製品もあり、GIGA商戦にはしっかりと取り組みたいです。

 市場の盛り上がりに向けて、展示会やセミナーが数多く開催される予定です。特にパートナーの展示会が多いので、積極的に出展して新しい商品の提案を進め、新しい需要をともに創出し、商談の機会を増やしたいと計画しています。

 加えて、今後「Copilot+ PC」といった新しい技術を盛り込んだ製品が次々と投入されることから、当社としても専門知識のある営業を育て、パートナーの皆さんに最新情報を提供するといった部分に力を入れていきます。

 「Windows 10」のEOSについては、駆け込み需要に間に合わないお客様も見込まれます。そのお客様に対し早めのリプレースを促すことにも一緒に取り組みたいと思います。

地域拠点の取り組みが会社の大きな支えに

 顧客に寄り添い、多様な声を拾い上げるために、また、パートナーとの良好な関係を維持するためにも、各地の拠点は大きな意義があるように思えます。地域拠点には何を期待しますか。

渋谷 本部が考える事業方針があり、会社として注力することに違いありませんが、それだけで会社が成り立っているわけではありません。各地の拠点が現場ごとに固有に手掛けていることを合わせると、国内売り上げの20~30%に相当します。

 例えば一例ですが、新潟の拠点ではある従業員が顧客の仮想化基盤を一からつくりあげました。ただ、本社から「仮想化の案件をたくさん手掛けなさい」と指示したことは一度もありません。顧客の悩みに応えて、独学でスキルを高め、本部の支援を得ることなく提案に至りました。結果、その顧客から信頼され、今ではシステム周りを全て任されているそうです。

 私は「答えは現場にある」と思っています。現場のお客様にいろいろなことを教えていただき、一緒に携わることで私たちのノウハウが蓄積し、技術やサービスが向上していきます。EOSの反動減がやってくるからこそ、こういった取り組みがとても大事ではないでしょうか。
 
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外部リンク

Dynabook=https://dynabook.com/