コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)では11月に理事会を開催し、新たに2社が入会して、われわれとともに活動してくれることになった。正会員として入会したAIパートナーズは、一般企業へのAI導入の支援や、子ども向けのAI活用塾を行っている。企業への導入支援では、まず、生成AIを利用したときの著作権問題について、よく聞かれると言う。
一方、私の中学時代の恩師である国語教師の名前を冠した「大村はま記念国語教育の会」の20周年記念研究大会が10月に専修大学であった。
私は、公立学校の教員による「やなせたかしの言葉研究」という発表に夢中になった。NHKの朝ドラでも話題となった漫画家やなせたかし氏とアニメにもなっている「アンパンマン」を題材に、アンパンマンの優しさについて5~6年生の児童が自ら調べ、議論し、発表したものだ。子どもの発言の中には、「僕はみんなから優しいと言われるけど、それは弱いからなんだ」という告白があり、別の子からは「強くなければ優しくなれない」と、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説のような発言もあったそうだ。
最後に先生が、「AIがどう回答するか調べてみようか」と促すと、子どもたちは「自分たちがこれだけ調べたのだからAIに聞かなくていい」と答えた。出来過ぎのような気もしたが、子どもたちの本心だろう。
生成AIとどう付き合うか。
AIパートナーズが運営する子ども向けの塾については、保護者への講演も依頼されている。確かに、著作権の問題もフェイク情報の見方など懸念はある。でも、生成AIだから何か特別な注意があるのではなく、情報モラルや情報リテラシーの応用に過ぎないと思う。AI導入企業の懸念に対しても、生成されたものが何かに似ていると思えば利用は控えたほうがいいかもしれないし、どうしても必要であればリスクを取って利用する判断だってあるかもしれない。
ACCSの設立以来、私は情報の意味や価値が理解される社会づくりに向けたさまざまな活動をしてきたが、今後より一層推し進めようと決意を新たにした。
なお、ACCSは、活動の普及拡大を目的に、6月に会員制度を改定し、入会金免除、年会費20万円で会員になれる準会員制度をスタートさせた、ぜひ活用してほしい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。公益社団法人著作権情報センター理事、公益社団法人日本文藝家協会知的財産権委員会委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。