ワイズマンは介護と医療の両軸で事業を展開しており、それぞれで得た知見を基に、多職種間のコミュニケーションを効率化するグループウェア「MeLL+」を提供している。2026年6月には医療従事者向けサイト「m3.com」を基盤に医療DXを展開するエムスリーグループへの参画を発表し、ビジネスにも弾みがつきそうだ。今後は、業務プロセスの見直しや活用支援など、単なる製品提供にとどまらない高付加価値な提案を推進する構えだ。
(取材・文/大畑直悠)
情報共有の重荷を解消
介護には医療機関などとの密接な連携が必要で、これまでファクスや電話、対面で行われていた多職種間の情報共有は重荷の一つだった。MeLL+では、医療側が持つ患者の基本情報やカルテ・所見、介護側が持つケア記録、ケアプランなどの共有が可能で、コメントを残したり、意見交換や相談を支援したりして、医療・介護サービスをチームとして提供できるようにする。
伊藤宏光 スペシャリスト
要介護者の家族との円滑なコミュニケーションをサポートする「MeLL+family」も提供する。マーケティング本部の伊藤宏光・ケアコミュニティ・デザイン・スペシャリストは「ニーズが高く好調な製品だ。業務が家族との電話がつながるかに左右されることや、請求書をデジタル化してもどのように送るかは(介護事業者の)悩みどころだった」と話す。また、オンライン面会機能も備えており、遠方に住む家族と介護利用者とのコミュニケーションをサポートする。伊藤スペシャリストは「ご家族に『会いに来てください』と言っても難しいケースが多く、急に状態が悪くなった際に、ご家族としても心配する気持ちのぶつけようがない。事業所側も、自分の身を守る意味でも、情報を随時共有する仕組みが必要」とする。
MeLL+は、政府が指針として掲げる「地域包括ケアシステム」の考え方とも合致するものだ。これは、高齢者が重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるようにする体制を目指すもので、実現には医療・介護、行政など多様な組織の連携が不可欠だ。MeLL+によるコミュニケーションの課題解決が果たす意義は大きい。実際に地域をつなぐ事例も生まれている。青森県八戸市では、介護や医療、消防、薬局といった100を超える事業所が参画する多職種連携コミュニティチーム「connect8」のコミュニケーション基盤として活用されている。
地域包括ケアシステムの実現においては、在宅介護事業者が重要なプレイヤーとなる。一方で「解決すべき社会課題の大部分を担うものの、見守りセンサーの活用など、介護DXは大規模な施設向けが先行している」(伊藤スペシャリスト)のが実情だ。在宅介護事業者にとっては、そもそもDXに取り組む目的が曖昧な点が課題となるケースもある。訪問数を増やすために生産性を上げても、支援先まで移動する物理的な距離もあり、効果が限定的になる側面は否めない。その点で、医療機関や家族との日常的なコミュニケーションを高度化し、既存顧客に提供するサービスを高品質にする提案は理解されやすいとする。
「パートナーは介護専門でなくてもいい」
販売面では、老舗ベンダーとしてMell+以外でも多様な介護業務を支援してきた知見を生かした顧客支援に力を入れる。伊藤スペシャリストは「医療の側にも、介護の目線で必要な情報の出し方をサポートできる。単なるシステムの導入にとどまらない支援を展開したい」と話し、導入や活用の支援に力を入れる構えだ。加えて、エムスリーの傘下に入ったことで医療側との連携を加速させる計画で「長年の宿願は在宅医療の中心であるクリニックの電子カルテとの連携だった。クリニック向け電子カルテ大手であるエムスリーとの連携は、MeLL+を大きく拡大する機会になる」と説明する。
26年4月から、準備ができた自治体から運用が始まった「介護情報基盤」も好材料となりそうだ。同基盤では、主治医意見書、要介護認定など、これまで医療や行政に分散していた情報を相互に参照しやすくなる。多職種間の連携が加速する中で、介護利用者の思いやリアルタイムに近い状態の共有など、よりきめ細やかなコミュニケーションを可能にするMeLL+の需要は高いとする。伊藤スペシャリストは「単に事務的な情報の参照ではなく、チームとして寄り添えるようにしたい」と力を込める。
パートナー戦略では、単なる製品の導入だけではなく、顧客課題をワンストップで解決するソリューションとしての展開を進める。伊藤スペシャリストは「これまで介護業界に関わっていなかったベンダーとも連携したいと考えており、多様な窓口から顧客接点を持ち、業務プロセスの設計や問い合わせへの対応など、必要な支援は当社から提供したい。介護領域に詳しくないベンダーであっても介護事業所を支援できるようにする」と意気込む。