オンライン書店で書籍を購入する場合、ユーザーは書籍名や著者名などの特定検索文字列を使って検索を行ない、書籍の絞込みを行うことがこれまで一般的だった。そんななか、この検索を全書に渡る全文検索の域にまで拡張するサービスがアマゾンから提供される。ある文節を検索文字列としてサイトで入力すると、サイトに登録された12万冊を超える書籍全体を検索する。

　その結果、対応するページとそのページを持つ書籍のイメージが表示される。顧客は書籍のイメージに対し、新たな検索文字列とともに、さらにきめの細かい検索を続けることで目的の書籍をすばやく探し出すことが可能な仕様となっている。多くの書籍に対する全書全文検索は、これまでは図書館などへ行かなければ享受できないサービスだった。この機能を一気に一般市場へ開放することの意義は果てしなく大きい。

　さらには、図書館データベースにおける新書の登録遅延という永遠のテーマに対する回答の1つとして、これまで図書館の検索機能を利用してきた顧客のほとんどが、この新しいアマゾンサイトを積極的に利用することになるだろう。オンライン書店の勃興から台頭への流れの中で、書籍販売を店頭で行うことのオンラインに対する相対的優位性は、時間の経過とともに斬新的に限定化してきたと言える。

　しかし、実際に書籍を手にとって直に確かめてみたり、似たような書籍を手に取っていろいろと比較できることこそが、オンライン書店よりも店頭販売の方が優れた点だった。しかし、全書全文検索機能をオンライン書店が実装してしまった今、店頭販売勢力がオンライン勢力に対して更に全面的な対決姿勢を堅持して行くことはもはや不可能だろう。書籍におけるオンラインと店頭販売との一体化が一気に成熟する契機となることが予想される。（米サンノゼ発:CHIBA SHOTEN, INC. 弘中伸夫）