▼地方のソフト開発会社のトップに話を聞くと、誰もが嘆くことがある。ソフト開発需要の約7割は首都圏で発生していると言われ、地方にあっても首都圏のビジネスを下請け案件としてでも受注しなければならないのは仕方ないが、今年4月以降大きく変わったことがある。「これまでは開発案件を受注して、本社に持ってきて開発することができたが、4月の個人情報保護法の施行以後、それが難しくなった」という。

▼行政システムであれ、企業の情報システムであれ、個人情報に関わるシステムもあれば、それとは関係ない場合もある。しかし、情報漏えいを気にするあまり元請け企業以外での開発が禁じられるようになったという。そうなると、地方の企業は優秀なシステムエンジニア（SE）を涙を呑んで東京に送り出し、そのSEは長ければ数か月も孤独に元請け先と会社で借り上げたアパートの往復の日々、というわけだ。当然、東京にある企業と地方企業のSEでは賃金格差も小さくない。地方の会社は住居を用意し特別手当を出し、それでも仕事を取って売り上げを稼ぐ、という構図ができている。万年出稼ぎのようなものだ。

▼新幹線や高速道路網の整備で地方と首都圏の距離が縮まり、通信インフラの充実で情報格差も薄れたかと思ったら、予想外のところに壁が立ちはだかる。通信ネットワークを活用すれば、技術的には地方でもバーチャルで東京の企業と同様にビジネスできる。しかし、情報セキュリティの壁は高い。そこまで必要なのか、とも思うのだが。