拠点の増加や働き方の多様化、SaaS利用の拡大を背景に、企業ネットワークの運用は複雑さを増している。一方で、現場ではネットワークエンジニア不足が深刻化し、限られた人員で多拠点を管理せざるを得ない状況が続く。こうした課題に対しAPRESIA Systemsが提示するのが、クラウド管理型ネットワーク「KOKOMO」だ。同社 経営企画本部 次世代推進第一部 次世代企画グループ グループ長の志川裕之氏に、開発の背景やパートナーにとっての価値を聞いた。
人員不足やSaaSの普及からクラウド型管理へ移行しつつあるネットワーク機器
現在、ネットワーク機器市場ではオンプレミス管理型からクラウド管理型への移行が加速している。背景にあるのは、運用の属人化と慢性的なエンジニア不足だ。特に多拠点展開を進める企業では、拠点ごとに設定や管理が分断されているとトラブル発生時の切り分けや現地対応に大きな負荷がかかるため、クラウド管理の需要が増加しているのだ。
提案・導入を担うパートナー企業も例外ではない。限られた人員で多拠点ネットワークの構築・運用案件を扱う中、設計や設定、サポートにかかる工数は増大している。
加えて、Microsoft 365をはじめ業務システムのSaaS化が進み、通信の可視化やトラフィック最適化へのニーズも高まっている。「クラウド管理型であれば、ネットワークの状態やトポロジーをリアルタイムに把握可能。オンプレミスでは見えにくかった情報が、クラウドなら一目で確認できる点を評価するユーザーは増えている」と、APRESIA Systemsの志川氏は話す。
APRESIA Systemsは、通信事業者向け機器をはじめ、エンタープライズや文教、社会インフラ分野にネットワーク機器を提供してきた国内メーカーだ。近年はAPN(All-Photonics Network)など新領域への取り組みを進めている。こうした取り組みを背景に、現場の負荷軽減を強く意識して設計されたのが、同社のクラウド管理型ネットワーク『KOKOMO』だ。
経営企画本部 次世代推進第一部 次世代企画グループ
グループ長 志川裕之氏
仮想SIMと国内サポートで差別化する「KOKOMO」
APRESIAが提供する「KOKOMO」は、2023年6月に仮想SIM技術を活用した革新的なリモートアクセスソリューションとして誕生した。携帯電話のSIM認証技術を応用することで、ユーザーが接続を意識することなく自動でVPNセッションを確立できる点が最大の特徴だ。セッションごとに鍵をリフレッシュする強固なセキュリティ構造を構えながら、従来のVPNで課題となっていた証明書更新が不要なため、運用負荷を大幅に軽減できる。昨今のSSL-VPNの脆弱性問題を背景に、厳格なセキュリティを求める自治体等での採用が急増したほか、VDI環境の接続性向上やローカルブレイクアウトによるトラフィック分散機能も高く評価され、累計出荷数は8.5万枚に達した。
こうした確かな実績を礎に、2025年10月、KOKOMOはクラウド管理型ネットワークソリューションへと大きな進化を遂げた。中核となるのはクラウド管理型のWi-FiアクセスポイントとPoEスイッチで、規模や帯域に応じた各3機種のラインアップを展開。多拠点展開する中小企業や、仮想SIMソリューションとの組み合わせにより自治体や文教市場を主要ターゲットに据える。さらに今春にはゲートウェイ製品の追加を予定しており、合計7機種で小規模ネットワーク全体を網羅する構成となる。これにより、社外からの接続手段であったKOKOMOは、社内LANまでを包含する包括的なプラットフォームへと進化したのである。
アクセスポイントやネットワークスイッチ、ゲートウェイをクラウドで一括管理
現状、クラウド管理型Wi-Fi市場では海外製品が主流だ。その中においてKOKOMOは貴重な国内ブランドとなる。管理画面は日本語でローカライズされ、直感的に操作できる。AIチャットによる技術QA対応に加え、トラブル時には専門スタッフによる有人での切り分け支援も行う。さらにメーカーの専門チームが直接ユーザーの環境へアクセスして問題解決を目指す「リモートサポート」もあり、安全性を確保しながら迅速なサポートを実現する点も独自の価値だ。
さらにAPRESIA Systemsでは、設定済み機器を出荷するキッティングサービスも提供している。ライセンス更新日の調整サービスなど、顧客企業のライセンス管理に伴う事務負荷を軽減する仕組みも整えており、ユーザーのみなならずパートナーも全面的にサポートする構えだ。
トラフィックの監視/機器の管理・設定変更など、直感的に操作が可能な日本語UIの管理画面
クラウド運用支援型ネットワーク基盤としてパートナーと価値を共創
KOKOMOが特に効果を発揮するのは、多拠点展開する中小企業や、GIGAスクール構想を背景とした文教分野である。志川氏は「導入前の無線サーベイ支援に加え、お客様と密に連携しながら、メーカー自身が伴走するサポート体制も高く評価されている。」と話す。
今春にリリース予定のゲートウェイ製品が加わることで、Wi-Fi、スイッチ、ルーターまでをクラウドで一元管理できる体制が整う予定だ。拠点間接続からインターネット収容までを含めたネットワーク全体の可視化と最適化が可能となる。
エンジニア不足と多拠点化が進む時代において、KOKOMOは単なるクラウド管理型製品にとどまらず、パートナーと共創する運用支援型ネットワーク基盤として存在感を高めていくに違いない。「パートナーが手間なく提案でき、エンドユーザーに安心して使っていただける仕組みをさらに突き詰めていきたい」と志川氏は力強く語った。