旅の蜃気楼

イエメンで感じたノスタルジー(上)

2007/07/16 15:38

週刊BCN 2007年07月16日vol.1195掲載

 旅好きは多い。BCNのスタッフにもいる。旅は「自分探し」だと思っている。中でも26歳の吉野理は「人の存在とは何か」を求めているように感じている。彼に「旅の蜃気楼」を預ける。(BCN社長・奥田喜久男)

【イエメン発】サナア空港に降り立った時、意外な印象を受けた。これまで旅をしてきた国ではどこも、空港から出ると、タクシーの客引きに、もみくちゃにされた。でかいバッグを抱えて、旅行者丸出しなのだから、狙ってくれといってるようなものだけど、この人たちはだいぶうっとうしい。バスで行くって断っても、「今日は走らない」って言う人がいて、その後ろをバスが通過していく、なんてこともあった。その点、イエメンは快適だ。タクシーから「乗らないか」と誘われても、「バスで」って言うと、「ああ、バスならあっちだよ」みたいな感じで、観光地ずれしていないのだ。

▼空港から、“ダッバーブ”と呼ばれる乗り合いタクシーで首都サナアの中心街に向かう。そのダッバーブで乗り合わせた人となぜかウマが合い、サナアを一緒に見て回ることになった。ヴィクトールという名前のマルタの船乗りだ。この人、やることがかっこいい。道端のホームレスの人によく金をあげる。それで「money is shit!」って言ってた。彼はこのあとロンドンまで行って友達に会って、さらに地中海のマルタまで帰るというのに、移動費と生活費合わせて500ドルしかなくて、それでも人に恵んでるんだからすごい。

▼サナアの旧市街は街全体が世界遺産で、最大の見所だ。さっそくそこに足を運ぶ。コンクリートの道と建物が並ぶ新市街を抜けて、陸橋の上から眺めると、城壁の向こうに旧市街の街並みが見えてくる。思わず二人して歓声をあげる。旅の醍醐味のひとつ。このタイムスリップ感。茶系と白を基調にした街並み。どこか懐かしさとぬくもりを感じるのだが、同時に独特な雰囲気も伝わってくる。男の人の装いは、アラブ独特の白い衣装を身につけ、ジャンビーアと呼ばれる短剣を腰に差して誇示し、大判のストールを頭に巻いて、できあがり。だから街も人も昔の時代にタイムスリップだ。みんな人なつっこい。[つづく](商品企画グループ・吉野理)
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