北斗七星

北斗七星 2010年10月4日付 Vol.1352

2010/10/07 15:38

週刊BCN 2010年10月04日vol.1352掲載

▼尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、日本の検察当局が中国人船長を釈放した。中国側に配慮した「政治決着」の色合いが濃く、政府の「弱腰」に不快感を表す向きが多い。反面、経済界からは安堵の声が聞こえる。最大のお得意先である中国と不仲になれば、経済立て直しに水を差されるからだ。

▼日本は、GDP(国民総生産)で中国に抜かれ、「アジアNo.1の強国」の称号は失われつつある。経済力だけが唯一、世界での発言力を保てる命綱だった。今後は中国など新興国を含め、経済外交で融和を図っていくことが求められる。戦争や金融危機など突発的な事変を除けば、外需を獲得できる相手国との揉め事が自らの首を絞める。残念ながら、今の日本はそんな立場に置かれているのだ。

▼ITサービス産業についても、日中の市場規模は同等になりつつある。中国内にある日系企業相手の日系ITベンダーの市場すら、5000億円程度はあるといわれている。今後の成長性をみれば、中国を中心とした世界から得る外需を度外視して日本のIT産業復興への道はないだろう。

▼現在、日中相互のプレーヤーがお互いの市場で活躍できる場をIT産業団体が模索している。日本政府も中国側にロビー活動を続けているが、商慣習や経済活動のやり方が異なり、容易には進まない。だが、これまでの地道な積み上げは実を結びつつある。そうした努力があってこそ、日本IT業界の外需も生まれてくるだろう。
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