BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ネットテレビの衝撃 20XX年のコンテンツビジネス』

2010/12/22 15:27

週刊BCN 2010年12月20日vol.1363掲載

 名は必ずしも体を表していない。アップルTVやグーグルTVなど、インターネットにつながる「ネットテレビ」は一つの象徴であり、むしろ副題の「コンテンツビジネス」の過去と今、そして明日を読むための一冊である。ハードである「TV」と消費される「コンテンツ」を並べたところに、本書の主題がある。

 語られるのは、メディアのビジネスモデルだ。アメリカを中心に繰り広げられてきたメディアの主導権争いとM&Aを振り返りながら、アメリカの映像ビジネスの現状と変化の萌芽を紹介する。

 いわく、ネットがコンテンツ流通の主流となるなかでは、端末となるデジタル製品自体は汎用技術の集合体になり、差異化を図ることができない。かといって、iPodとiTunesのように端末と流通をセットにした戦略も、コンテンツがフリー化するいま、すでにビジネスモデルとしての優位性は失われつつある。そこで出てくるのが、端末を動かすOSの覇権争い、検索などの使い勝手による差異化、そしてユーザーがつくるソーシャルメディアの取り込みだ。メーカーもコンテンツホルダーもプロバイダも通信キャリアも、プラットフォームと流通網の構築に血道を上げる。

 スマートフォンが売れ、国産電子書籍端末やスレートが登場。コンテンツサービス提供会社に至っては、雨後の筍のような状況にある日本。いよいよマルチコンテンツ時代のスタートラインに立ったといえる。その先読みに、欠かせない基礎知識を提供してくれる一冊だ。(叢虎)


『ネットテレビの衝撃 20XX年のコンテンツビジネス』
志村一隆 著 東洋経済新報社刊(1500円+税)
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