BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『閃け! 棋士に挑むコンピュータ』

2011/04/21 15:27

週刊BCN 2011年04月18日vol.1379掲載

 わが国でコンピュータ将棋の開発が始まったのは1970年代中頃といわれている。80年代後半には、多くのコンピュータ将棋プログラムが誕生しており、任天堂のファミコンのゲームソフトとしても製品化されるようになった。

 当初は、コンピュータ将棋はあまりにも弱いので、相手にされなかった。だが、開発が進むにつれてメキメキと腕を上げてきた。そうなると、将棋界の頂点に君臨するプロ棋士との対戦を望みたくなるのは自然の成り行きである。

 今回紹介するのは、コンピュータ将棋『あから2010』と女流王将(当時)の清水市代氏との激戦をドキュメンタリータッチで追った本である。人工知能VS人間といえば、無機質なイメージがあるが、この本を読むと、まるで人間同士が戦っているような感覚で迫ってくる。

 情報処理学会の「トッププロ棋士に勝つためのコンピュータ将棋プロジェクト」が開発した『あから2010』は、コンピュータ将棋ソフトのなかのチャンピオンクラスを四つ集めて、それぞれが提示した指し手のなかから、多数決で最終決定する「合議制」を採用した。

 2010年11月、会場となった東京大学本郷キャンパス工学部二号館は、闘いを観戦する将棋ファンで溢れ、異様な熱気に包まれた。結果は『あから』の勝ちだったが、そこに至るまでの過程が読み手をぐいぐい引き込んでいく。

 著者は二人とも「将棋はルールを知っている程度」なのが幸いして(?)、誰にも取っ付きやすい内容となっている。(止水)


『閃け! 棋士に挑むコンピュータ』
田中徹&難波美帆著 梧桐書院刊(1600円+税)
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