旅の蜃気楼

似て非なる中国の大都市

2011/04/21 15:38

週刊BCN 2011年04月18日vol.1379掲載

【香港発】ホテルの洗面台に置いてある歯ブラシの形にはいろいろなものがある。頻繁に中国に出向くようになってから、およそ1年になる。歯をきれいにする機能は同じだが、それぞれの都市で形が違うことが気になり始めた。日本のそれとも雰囲気が違うのだ。ごついというか、立派というか、洗練されていないというか、確かにしっかりとはしている。

▼まだまだ限られた経験からの印象だが、歯ブラシに限らず、街づくりも何だか同じような印象を受ける。3月5日は中国の清明節(お彼岸)だ。その週に香港に出かけた。街を行き交う人たちがいつもと違ってゆったりしている。香港はビルの間を道がくねり、いつ訪れても車も人も慌しい。それが清明節の期間は静かなので、のんびりと街を歩き回った。香港島の金融街では日本人の方が義援金の募金活動をしていた。ひと言ふた言交わして100香港ドルを募金箱に入れた。一生懸命な姿に頭が下がる。コンベンションセンターに向かって歩く。新しいビルを建てている。まだスペースがあるのだ。湾仔(ワンツァイ)からMTR(港鉄)に乗って対岸の九龍に移動する。

▼九龍にも世界各国から人が集まっているが、人通りは少ない。海を隔てて対岸に建つビル群を眺めた。企業の広告塔や看板が満開の桜のようにきらびやかだ。Panasonic/TOSHIBA/EPSON/HITACHI/OLYMPUS/PHILIPS/TCL/LGの広告。それらよりも一段と大きなSAMSUNGの青い電光文字。日本勢、頑張れ。海べりの柵にもたれかかって振り返ると、CANONの広告がぽつんと目立っている。この風景は上海に似ている。上海が香港に似たのか、それとも香港が上海に似たのだろうか。街づくりは歴史を経て相互に影響しあう。それでも日本とは違った風景だ。(BCN社長・奥田喜久男)

九龍から眺めた香港島のビル群の風景
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