BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』

2013/10/03 15:27

週刊BCN 2013年09月30日vol.1499掲載

 『都心の謎篇』に続くシリーズ第二作。前書では、不可解な皇居の建物や、都内の飛行場など、近代化の名残を求めて新旧の地図を手がかりに町を歩いたが、本書でも手法は同じ。豊富な地図と写真で読者を案内する。

 東京は、武蔵野台地の末端にある湧水池から伸びる川と、小高い丘や谷からなる複雑な地形の都市だ。「山の手」「下町」という言葉からもわかるように、高台と低地をつなぐ坂の多い町でもある。たとえ標高差はわずかでも、坂の上と下とでは、川の氾濫や地震の被害の差は大きい。関東大震災のとき、高台は震度5だったが、低地には震度7を記録した場所もあったという。だから、人は高台に住みたがる。

 現在の東京の原型は、明治期につくられた。その時代の階級社会を示すのが、麻布や高輪、目白、本郷などの高台に建っていた邸宅たち。江戸末期、大名や旗本の屋敷だったものが明治に入って皇族・華族の手に渡り、やがて財閥たちがそれに加わった。巻末の「都心の『山』のお屋敷」リストで、その多くが現在はマンションや公的施設に生まれ変わっていることがわかる。ヒエラルキーが地価に置き換わり、それが公共化を促した。

 スマートフォンのマップアプリには等高線がないので、土地の高低差はわかりにくい。しかし実際に歩いてみれば、地形は脚が感じてくれる。これからの季節、東京を訪れたときに、目的地の周辺をこの本を片手に歩けば、都市の顔が見えてくる。(叢虎)


『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』
竹内正浩 著
中央公論新社 刊(1000円+税)
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