BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『睡眠と脳の科学』

2014/03/13 15:27

週刊BCN 2014年03月10日vol.1521掲載

実生活に即役立つ睡眠法

 健康の要諦は、バランスの取れた食事、適度な運動、そして休養(睡眠)にあるといわれる。このうち、食事と運動は意志の力で正しい道を歩むことができるが、休養(睡眠)だけは意のままにならない。眠らなければならないのに目が冴えて眠れない、起きていなければならないのに船を漕いでしまうといった経験は、誰にでもあるだろう。

 本書は、これまでに得られた睡眠に関する科学的知見を、極めて平易に、網羅的に、そして実生活に役立つかたちで紹介した一冊。「人間はなぜ眠るのか」から始まって、脳の成長・働きと睡眠の関係、快眠のための環境づくりを勉強したあとで、徹夜・夜勤・早朝起床・一夜漬け・時差ぼけ・かぜ・飲酒・災害など、さまざまな状況に応じた“睡眠術”を教えてくれる。ちなみに、よい睡眠をとらないと記憶は定着しないらしい。「ふむ、だからなのか」と妙に納得。

 後半は、睡眠と病気との関係。がん、高血圧、糖尿病、うつ病などとの因果関係が語られる。働く人の約半数が睡眠に関する悩みを抱え、そのなかの8割が睡眠障害につながる「かくれ不眠」に該当するという指摘には慄然とさせられる。

 遊びはなく、大学の教室でわかりやすい講義が淡々と進められていくような感じだ。しかし、講義が終わったときには、実生活に役立つ知識が身についている。そういえば、新書ブーム以前は、自然科学も社会科学も人文科学も、新書といえばこんな本だった気がする。(叢虎)


『睡眠と脳の科学』
古賀良彦 著
祥伝社 刊(760円+税)
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