BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『首都水没』

2014/09/25 15:27

週刊BCN 2014年09月22日vol.1547掲載

水害のメカニズムを解き明かす

 昨年、スイスの再保険会社、スイス・リーが発表した「自然災害リスクの高い都市ランキング」で、東京・横浜が世界1位になった。本書は、洪水対策の第一人者が、なぜ東京が災害に弱い都市なのか、その理由を解き明かしながら、強靱な国づくりを説く警世の一冊。

 人口と都市機能の集中は、東京を水害に弱い都市にした。江戸時代に行われた河川流路のつけ替え工事──利根川の東遷と荒川の西遷──は、古い水田地帯を守り、武蔵野平野の東部を穀倉地帯に変え、舟運による物流を盛んにし、江戸の繁栄を支えた。しかし、これがさまざまなかたちで東京の治水を弱くしている。さらに、明治時代に始まった地下水のくみ上げで地盤沈下が進んだ結果、現在、干潮でも水が引かないゼロメートル地帯や満潮になると水没するゼロメートル地帯、高潮災害が起きると水没する地域は、東京23区全体の面積の41%にも達するという。もし利根川が洪水になれば、昔の川筋に従って、水は低い土地である東京東部にやってくるのだ。

 では、台地である山の手は安全なのかというと、すでに何度も経験しているように、そんなことはない。台地を削って流れる神田川や石神井川は延長が短く、勾配が急で、ゲリラ豪雨などでまとまった雨が降れば短時間で水位が上昇する。加えて、かつて川が流れていた「みずみち」に雨水の流れが集中し、そこで事故が起きる。水害のメカニズムを知って命を守ること、そして過去に学ぶ温故知新の姿勢で治水を考える──その当事者は、都民だけではない。(叢虎)


『首都水没』
土屋 信行 著
文藝春秋 刊(760円+税)
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