BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本語ふしぎ探検』

2014/11/27 15:27

週刊BCN 2014年11月24日vol.1556掲載

知っているようで知らない言葉

 「桃栗三年、柿八年」に続く言葉は?

 薄着の季節になると女性が気にする「二の腕」とはどの部分を指すのか?

 今週は、気楽に読めて、目からウロコが何枚も落ちる本を俎上に乗せよう。

 さて、「桃栗三年──」に続く言葉だが、「ユズは九年でなりかねる、ナシの馬鹿めは十八年」とも言うらしい。何かに取り組んだとき、すぐに結果を求めたがる人に対して、まずは地道な努力が大切と言い聞かせる場合に使われることが多い。

 次の問い、「二の腕」だが、二というからには一もあるだろうと思ったら、本当に「一の腕」はあるという。二の腕とは、肩から肘までの間の部分を指すというのが現代の解釈だが、1603年にポルトガルの宣教師が編纂した日葡辞書には「一の腕とは肩から肘までの間の腕、二の腕とは肘から手首までの腕」という解釈が載っているそうだ。しかも、不思議なことに日葡辞書を除いては、古い文献をたどっても一の腕という記述はどこにも見当たらない。

 「邸宅」と聞けば、多くの人は広大な敷地に立つ豪華な建物を想像するだろう。ところが、刑法の条文に登場する邸宅とは、「空き家」を指すということはあまり知られていないのではないか。

 また、民法で「善意」というのは、道徳的にすぐれていることを指すのではない。ある事実を知らない場合をいう(「善意の第三者」など)。知っている場合は「悪意」となる。

 商談の際に威力を発揮する雑談のネタとして使える一冊だ。(仁多)


『日本語ふしぎ探検』
日本経済新聞社 編
日本経済新聞出版社 刊(850円+税)
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