BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>「IT専門調停委員」が教える『モメないプロジェクト管理 77の鉄則』

2015/01/15 15:27

週刊BCN 2015年01月12日vol.1562掲載

“IT紛争”がわかるIT用語集

 「上司がITベンダーの入れ知恵で、急にアジャイルでいこうなんて、言い始めたんですよ。終わったと思いましたね」とユーザー企業のIT部門で新規開発プロジェクトを任されたマネージャーがつぶやく。ユーザー企業のIT部門といえども、新しいことに取り組むのは楽しいもの。とはいえ、余計なトラブルは避けたい。結局、イヤイヤながらアジャイル開発に取り組むことになる。

 アジャイル開発の採用を決めた上司は、決して“ご乱心”というわけではない。ウォーターフォール方式の開発を何度も経験しているからこそ、アジャイル開発に可能性を見出した。ところが、そこで満足してしまい、後は担当マネージャーに丸投げ。「君ならできる」と言うのみで、遠くから成功を祈っている。

 入れ知恵したITベンダーは、他社との差異化をアピールするためにアジャイル開発を提案。最初はよかったが、短期間ではユーザー企業側で要件を詰め切れないことも多く、スケジュールに乱れが生じる。最初に開発した部分についても、ユーザー企業の評価が低いと、早い段階からモメ始めることになる。そこで信頼を失えば、ウォーターフォール方式と違って、短いサイクルでモメ続けることになってしまう。

 システム開発には、さまざまな工程や手法がある。本書は、それらに関する77の専門用語を取り上げ、トラブルの因子をわかりやすく解説。用語集としても活用できる。著者は、東京地方裁判所のIT調停委員を務めていて、多くの“IT専門紛争”を知っているだけにトラブル回避策には説得力がある。(亭)


「IT専門調停委員」が教える『モメないプロジェクト管理 77の鉄則』
細川義洋 著
日本実業出版社 刊(2000円+税)
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