BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『インバウンドの衝撃──外国人観光客が支える日本経済』

2015/11/12 15:27

週刊BCN 2015年11月09日vol.1603掲載

訪日外国人へのおもてなしの処方箋

 日本を訪れる外国人(インバウンド)の数は、2013年に初めて1000万人を超え、昨年は1341万人、今年に入ってからはさらに加速し、1月から9月の累計(推定値)で約1449万人と、政府が2020年の目標として掲げた2000万人を年内にもクリアしそうな勢いだ。2003年に外国人旅行者の訪日促進活動、ビジット・ジャパン・キャンペーンが始まった当時は524万人だから、まさに激増といっていい。本書は、この構造を解剖し、日本経済に与えるインパクトを「日本再生の切り札」にするために、これから何が必要かを提案する。

 外国人旅行者の激増は、すでに整備に時間のかかるインフラの不足を招いている。読者の皆さんもお気づきのように、東京や全国の主要観光地ではホテルを予約するのが難しくなっている状況だ。また、インバウンドの増加を牽引している中国とASEANからの旅行者たちは、必ずしも日本の基幹空港を玄関にしていない。本書では、北海道・旭川空港を例として挙げている。日本に来てから訪れる観光地も同様で、日本人が少ない山梨県富士吉田市の新倉山浅間公園は、富士山の絶好のビュースポットとしてタイ人に人気だという。これまでの日本人観光客相手と同じ物差しを使っていたのでは、対応できないのだ。

 こうした外国人旅行者が日本で消費するお金は、昨年2兆300億円に達した。日本の個人消費の0.6%で、これは今後も増加していく。このお金を観光立国=地方創生につなげていくために、われわれにはやるべきことが山ほどある。(叢虎)


『インバウンドの衝撃──外国人観光客が支える日本経済』
牧野知弘 著
祥伝社 刊(800円+税)
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