今年後半のバズワードともいえる「フィンテック」は、IT業界の新しいエコシステムの構築を後押しするかもしれません。現在のところ、関連するスタートアップ企業が市場創出を牽引している印象ですが、日本では、彼らが既存の金融機関のビジネスと真っ向から対立するというより、協業して新しいサービスを消費者に届けるというモデルが先行しています。スタートアップが顧客接点となるフロントエンドの先進的なサービスを開発し、既存の金融機関は、自らのバックエンドシステムのデータとスタートアップのサービスを連携させて、新しい顧客体験をコンシューマに提供しようとしているという感じでしょうか。
ただし、フィンテック市場の主要プレイヤーは、スタートアップと金融機関だけではありません。両者には本来接点がほとんどなく、うまく協業するための土壌もまだないからです。彼らをつなぎ、新しいソリューションを実用可能なかたちに責任をもって仕上げる役割を担うSIerの存在は、フィンテック市場の成長に不可欠です。反対にSIerにとっては、これまで対岸の存在としてみていたコンシューマ向けアプリのベンダーが、有望な協業相手になり得る時代になったといえるかもしれません。フィンテックに限らず、こうしたオープンイノベーション的な姿勢は、SIerが新しいビジネスチャンスをつかむために不可欠になりつつあります。(本多和幸)
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フィンテック入門 金融×ITがもたらすビジネスチャンスメールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.12.15」より