BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ラストキャリア』

2016/03/03 15:27

週刊BCN 2016年02月29日vol.1618掲載

地方創生に貢献する新しい生き方

 企業が行うリストラのターゲットは、主に40代以上だ。その世代になると、これまでの実績から、必要な人材かどうかの判断を企業が下しやすい。リストラを実施しない企業なら、定年まで安定した収入を得られるが、残りの人生でキャリアをもっと有効活用できる手段があるのではないか。本書のポイントは、そこにある。

 タイトルの「ラストキャリア」とは、都会の民間企業出身の人材が地方行政で働き、公のために尽くす生き方を意味する。著者の造語だ。

 50代半ばに著者が恩師から聞いた「君たちは、第二の青春のただ中にいる」に触発されたのが、ラストキャリアを意識するきかっけとなる。50代になると、リタイアが視界に入ってくる。しかし、すぐにはリタイアしないため、今後の人生設計を考えるようになる。そして思う。「もっと社会の役に立ちたい」と。そこに恩師の言葉である「第二の青春」が響いた。

 地方は今、企業の幹部経験者を求めているという。政府が推進する地方創生も後押しし、さまざまな取り組みが行われているため、地方ではマネジメントのできる人材が必要とされているのだとか。真偽のほどはともかく、本書ではラストキャリアの事例を四つ紹介している。

 おもしろい視点だが、気になるのは地方では政治抜きでは話が進まないところ。市長になった事例も紹介されているが、参考にならない。地方行政に無縁なラストキャリアが欲しい。

 ちなみに、ラストキャリアの対象は、企業の幹部経験者である。リストラ対象者は、ここでも必要とされていない。(亭)


『ラストキャリア』
谷川史郎 著
東洋経済新報社 刊(1500円+税)
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