BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『お金をドブに捨てないシステム開発の教科書』

2016/03/31 15:27

週刊BCN 2016年03月28日vol.1622掲載

勝敗は要件定義前に決まる!?

 失敗をみて問題点を指摘することはたやすい。それっぽい理由を挙げて、したり顔をする識者や解説者が多いのはそのためだ。たいした解決策は提示してくれないのに、それっぽく聞こえてくるから恐ろしい。ただ、問題点の指摘は共感を得やすいのか、支持する人が必ず出てくる。識者や解説者の仕事がなくならないのは、そのためだろう。

 システム開発は失敗が多いという。SIerが悪いのか、システム部門が悪いのか、ユーザー企業が悪いのか。いつまでたっても、この議論が続いている。結局、システム開発は大変なのだ。かといって、失敗が許されるわけもなく、何とかしなければならない。

 システム開発が失敗すると、ユーザー企業とSIerのどちらの負担になるかはともかく、開発費用などのお金をドブに捨てることになってしまう。ドブに捨てないようにするには、どうするべきか。

 そこで本書である。冒頭で3社の失敗事例を挙げていることと、副題の「なぜ、要件定義がうまくいっても使えないシステムができてしまうのか?」から、問題点を指摘するだけの指南書かと思ったが、実は違う。システム開発のあり方を「経営の視点」「会計の視点」「業務の視点」「システムの視点」で章立てし、しっかり解説している。著者曰く、システム開発を成功させるポイントは二つ。「業務の徹底的な洗いなおし、業務改革をすること」「要件定義前にシステム構想をきちんと練りあげること」。ピンとくるだろうか。ある程度の知識や経験をもつSEにおススメしたい。(亭)


『お金をドブに捨てないシステム開発の教科書』
中川 充 著
技術評論社 刊(1880円+税)
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