不老不死という人類の夢を考える

 人工知能(AI)を脅威として捉える人は、人類の居場所を心配しがちだが、心の片隅で寿命をもたない人工知能に嫉妬しているのではなかろうか。人工知能は、さまざまなデータから学習することにより賢くなり続け、老化することがない。つまり、人工知能は死なない。

 不老不死は人類の夢だが、いずれ死期が訪れる。病気や事故をうまいこと避けてきたとしても、老衰を避けることはできない。では、自分の寿命はいつ尽きるのか。そんな疑問にヒントをくれるのが、本書である。

 まず、死に結びつく(老衰に向かう)老化は、細胞の老化が大きな要因になっているということ。細胞の老化とは、細胞分裂の回数に限界があり、分裂能力が低下していくことを意味する。細胞が老化すると、体の機能が弱っていき、最終的には死に至るというわけだ。

 であれば、細胞分裂の回数を操作することで、永遠に細胞分裂が繰り返されるようにすれば、不老不死を実現できると考えられる。人間の体で新しい細胞を生み出す役割を担うのは、「幹細胞」という細胞とのこと。そのため、幹細胞を操作すれば、若さを維持できると解釈できる。科学は発達すれば、人間は不老不死の体を手に入れられそうだ。もしかしたら、人工知能が人類より賢くなるまえに、それが可能になるかもしれない。

 とはいえ、著者は最後にこう記している。「寿命がないと、世代の交代ができません。新しい命が誕生できなくなり、進化も起こりません」。花は散るからこそ美しい。(亭)

『寿命はなぜ決まっているのか』
小林武彦 著
岩波書店 刊(840円+税)