BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ビジネスモデルの教科書』

2016/12/28 15:27

週刊BCN 2016年12月19日vol.1658掲載

儲かる仕組みのつくり方

 ITバブル全盛期の1990年代後半、一大ブームとなったのが「ビジネスモデル特許」だった。なかでもネットショップは登場したばかりということもあって、誰もが思いつきそうなちょっとした仕組みでも、多くの企業が特許の取得に動いていた。その結果、世界中で特許申請競争と訴訟合戦が起きたのは、記憶に新しいところだ。

 ところで、「ビジネスモデル」とは何か。前述のビジネスモデル特許は、業務プロセスのようにもみえる。よく使うビジネスモデルだが、正確に説明する自信がない。そんな疑問に答えながら、ビジネスモデルについて解説するのが、本書である。

 では、ビジネスモデルとは何か。著者はこう説明する。「ある業界を前提とした競争優位獲得を目的とした仕組み」。ここでのビジネスモデルとは、ある特定の業界でのビジネスが前提となる。業界は、「誰に」「何を」得るかという厳密な市場定義よりも広い概念であり、実質的な競争空間のことだという。

 本書では、ビジネスモデルの定義の次に、企業名とそのビジネスモデルを用いて事例を紹介。やや難しいと感じる教科書的な書き方になっているが、企業名があるおかげで、事例の内容がイメージしやすい。

 心情としては、自社の製品やサービスの質を上げることが、ビジネスを成功に導くことにつながってほしいところ。ただ、停滞気味の業界、衰退傾向にある業界で、成功するにはどうするべきか。ビジネスモデルを考えることが、突破口になるのかもしれない。本書を読むことで、そんな思いを抱いた。(亭)

『ビジネスモデルの教科書』
今枝昌宏 著
東洋経済新報社 刊(1850円+税)
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