BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『中国とビジネスをするための鉄則55』

2017/05/17 09:00

週刊BCN 2017年05月08日vol.1676掲載



中国人の働き方は“水くさい”のか!?

 “55の質問と回答(Q&A)”から編集されている本書は、ビジネスで中国人と円滑にコミュニケーションするための原則がわかりやすく書き記されている。一つ拝借して紹介すると、会社で新人の仕事が捗っていないとする。日本だったら同じ課の同僚が助けに入るところだが、中国では同じ課の同僚でも自ら進んでは動かない。課長がみかねて、「おまえ、ちょっと新人を助けてやれ」と指示すると、その同僚は「ゴールの設定と評価の方法を確認し、成果に対する自分の報酬を要求してくる」ことが多いのだという。

 日本人からみれば、ずいぶんと水くさい職場にみえるが、中国人は日本人以上に成果と目標を重視する働き方をしている。もし日本人の課長が「新人を助けろ」と業務範囲も成果も報酬も曖昧な日本的な指示を出せば、中国人は動かないどころか、会社を辞めてしまうことにもなりかねないとか。

 こうした中国人のドライな働き方は、一見すると“西洋式”のようにみえるが、実は中国の長い歴史に深く根づいた価値観だと、著者の吉村章氏は分析する。中国の文化や歴史に精通している著者ならではの中国人とのビジネスコミュニケーションのノウハウが詰め込まれている一冊である。中国に赴任したり、中国企業と取引を増やしたいと考える日本企業の経営者、担当者に最適な入門書だ。

 吉村氏は台湾COMPUTEX(台北国際電脳展)主催団体の一つである台北市電脳公会(TCA)東京事務所代表や、アジアビジネスを手がける中小企業を支援するASIA-NET代表を務めるなど、幅広く活動している。(寶)


『中国とビジネスをするための鉄則55』
吉村 章 著
アルク 刊
(1600円+税)
  • 1