夏は、望むと望まざるにかかわらず、さまざまな昆虫との触れ合いが増す季節ですね。昆虫が幼虫から成虫になる際に、蛹(さなぎ)の形態を経るものを完全変態といいますが、文字通り、幼虫と成虫ではまったく別の生き物にみえるほどに変わってしまうわけで、生命の神秘を感じずにはいられません。例えば、漢字で書くと「蟻地獄」という強烈な字面のアリジゴク。トンボに似たウスバカゲロウの幼虫であることは有名ですが、幼虫時は飢えと渇きに強く、非常に強い生命力をもっているにもかかわらず、成虫となって飛び立つと、ストレスに弱いデリケートな昆虫になってしまうのは不思議なものです。

 国内の企業向けITビジネスの世界では、とくに中堅中小企業向けのマーケットで地殻変動が起こりつつあります。ユーザー側のIT投資が拡大し、市場そのものが成長する可能性を、多くのプレイヤーがここに見出しているからです。デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、従来このマーケットでビジネスをしてきた既存の有力プレイヤーも、「完全変態」ともいえるような大変革により、生き残りを図ろうとする動きも顕著になってきました。ただし、これまではアリジゴクのようにしぶとく強靭なビジネスを展開していたとしても、蛹を経て空に飛び立つときにウスバカゲロウを見習ってしまっては、長く生き残れないかもしれません。(本多和幸)