暴力団の実態を明らかにする

 暴力団とは何なのか。誰もが知っている言葉だが、どのような組織かを詳しく把握している人は多くないだろう。本書は、北九州市の特定危険指定暴力団・工藤会に焦点を当て、暴力団の実態を明らかにする。

 映画やドラマなどで暴力団を目にすることはある。しかし、現実世界で暴力団員とかかわることは、ほとんどの人はないはずだ。

 最近では、暴力団排除の機運が高まり、関連の法律や条例が定められている。社会から厳しい目が向けられる中、暴力団の勢力は減少の一途をたどっている。警察庁のまとめでは、昨年末時点の全国の暴力団勢力は、過去最少の2万8200人で、15年連続で減少している。

 本書が取り上げる工藤会は、これまでに一般市民を標的とした事件などを起こしたとされ、警察が威信をかけて壊滅作戦に取り組んできた経緯がある。かつては北九州の繁華街を「工藤会組員が大手を振って歩いていた。まさにやりたい放題だった」が、現在はトップらが逮捕、起訴され、「屋台骨が大きくぐらついている」という。

 著者は、福岡県警の警察官として、警察人生の半分を暴力団対策に費やしてきた。取り締まる側から見てきた工藤会の組織の変遷や各事件に加え、暴力団と市民のかかわりについても論じている。一読すれば、コンプライアンスについて改めて考えるきっかけにもなるだろう。(鰹)
 


『県警VS暴力団 刑事が見たヤクザの真実』
藪正孝 著
文藝春秋 刊(850円+税)