▼マイナンバーとマイナンバーカードをめぐって問題が噴出している。公金受取口座として本人以外の家族名義の口座が登録されているケースが約13万件に上ることが判明。公金受取口座は税金の還付などに用いるもので、本人名義であることがルール。マイナンバー制度では戸籍同様に氏名を漢字表記で取り扱うのに対し、銀行口座はカナ表記のため、機械的に照合できない点が課題として指摘されている。

▼来年度秋の廃止が決まった健康保険証としてのカード活用でもトラブルが相次ぐ。被保険者情報の誤りやシステム不具合によって加入資格が確認できず、医療費を「10割負担」で請求される例が報告された。医療機関の窓口は、患者からのクレームと事務作業の増大におびえている。

▼マイナンバーカードが円滑に運用されるようになれば、同姓同名の住民が取り違えられるような事故は減り、他人による保険証の流用といった不正もしにくくなる。社会の効率化のため、番号制度が必要という方向性は間違っていない。しかし、その実現のため末端の職員に負担が押しつけられているのが現状だ。机上で引いたスケジュールを死守するためのひずみが生まれていないか、確認の必要がある。（螺）