受験生時代のように勉強できない人に

　「子供は勉強することが仕事」。小さいころ、大人からこんなことを言われながら、宿題を早くやるよう促された経験のある人は少なくないだろう。ただ、逆に言えば、大人になったら受験生時代のような勉強の苦しさからは逃れられると思っていた。それが今や、企業も政府も「リスキリング」の大合唱である。ベテラン社員であっても、営業はデータ分析、開発者はAIなどのスキルを身につけ、新たな価値を創造せよという。

　しかし、明確な期限があり、進路を左右するような結果が待ち受けることから、強制的に勉強を求められる受験生とは異なり、多くの大人は勉強しなくても、当座の仕事に困るわけではない。「勉強しようかな」という気持ちはあっても、忙しさからつい先延ばしにしてしまったり、話題のテクノロジーを扱った本を読んでわかった気になったが、何ら仕事につなげられていなかったり……。普通の大人なら、そんな結果になってむしろ当然かもしれない。

　本書は、学生と社会人では必要な勉強法が根本から異なり、限られた時間で結果を出す「戦略的な勉強能力」は今後重要なビジネススキルになると指摘する。終章は勉強の「習慣化」に割かれており、面倒くさがりの大人にこそ適したリスキリングの手引きになりそうだ。（螺）
 

『勉強の戦略』
岡 健作　著
朝日新聞出版　刊　1760円（税込）