▼テレビのニュースや、地域の防災行政無線から、「熱中症を防ぐためエアコンの適切な使用を」という注意喚起が繰り返し聞こえてくる。人間は年を重ねると温度や脱水の感覚が鈍くなるため、熱中症一歩手前の状態にあっても暑さを自覚しにくくなる。高齢者の暮らしの中では、体感ではなく温度計で室温を正しく認識し、のどの渇きを感じなくても計画的に水分を補給することが重要だ。

▼世界気象機関などは、7月の世界の平均気温が観測史上最高になるとする見通しを発表した。東京都保健医療局によると、昨年夏に23区内では206人（速報値）が熱中症で亡くなった。今年も熱中症とみられる死者について連日報じられている。「災害級の暑さ」とよく言われるが、この暑さは災害そのものと呼んで差し支えないのではないか。

▼もしこの瞬間、電力網に深刻な障害が起き、停電が長時間にわたったとすれば、人の生死にかかわる厳しい環境の発生に直結する。私たちは経済活動や社会のあり方のみならず、もはや生命の維持自体をテクノロジーに全面的に依存している。このような生活はいつまで持続できるのか、この夏、一度真剣に考えてみる必要がある。（螺）