▼10月10日に発生した全国銀行データ通信システムの不具合で、記者も影響を受けた。といっても振り込みが2日遅れただけで大きな支障はなく、呑気に構えていた。しかし、これが個人事業主や企業であれば、死活問題につながりかねず、笑い事ではなくなっていただろう。

▼原因は全銀システムと各行を結ぶ「中継コンピューター」でのデータ処理にあるようだが、真因はいまだ定かではない。顧客に影響を及ぼす大規模障害は1973年の稼働以降、初めてと言われる。一日も早い究明を期待したい。

▼気になったのは障害を巡る対話のあり方だ。SNS上では「ちゃんと振り込まれるのか」という声が多数見られた。復旧次第、順次着金すると考えるのが一般的だろうが、急に手元からお金が消えた身からすれば、不安に駆られても仕方がない。

▼例えば「時間はかかっても必ず着金するから安心してほしい」という言葉でもあれば、状況は変わっていたかもしれない。ITシステムが進化しても、トラブルに向き合うのは人間である。早期復旧はもちろんのこと、問題発生時にどういうメッセージを出すべきか、という観点からのリスクマネジメントも求められている。（無）