BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『全社デジタル戦略 失敗の本質』

2025/09/12 09:00

週刊BCN 2025年09月08日vol.2074掲載

経営陣の覚悟を求める

 企業のDXに伴走してきた経験から、先人たちが失敗した理由を知り投資を最適化するよう説いている。

 現状、事業側企業は全体としてレガシーシステムからの脱却が進んでおらず、守りのIT投資が肥大化。攻めの投資であるDXも遅れ、その成功率も海外と比較して低い。背景としてCIO・CDOの設置率やIT部門の位置付けが低いことを挙げる。

 IT改革は経営に必要不可欠な要素のはずだが、「本業」ではないため一般的に関心は低い。本書は通常の事業成長ストーリーと同様、競合との差別化や市場の状態などを見極めながらストーリー化し、それに連動させてデジタル戦略を立てるよう促す。

 中でも、プロジェクトの企画構想段階で事業側のコミットメントを得ることを強調。業務を標準機能に合わせるなら、まずどこにギャップがあり、それが自社の競争優位性にとって必要なギャップなのか、ただ非効率な業務を行っているだけなのかを見極めなくてはならない、と。合意がないまま要件定義に進んでしまうと、現場の反発は避けられない。

 総じて「分からないから」と誰かに丸投げするだけでは期待した成果は得られない。経営陣が優先順位を高く置き、関心を持ち続ける覚悟が求められている。(実)
 


『全社デジタル戦略 失敗の本質』
ボストン コンサルティング グループ 編
日経BP 刊 2970円(税込)
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