BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』

2025/09/19 09:00

週刊BCN 2025年09月15日vol.2075掲載

価値を持つ、言語化できない「暗黙知」

 IT業界でAIという言葉を聞かない日はない。2025年のトレンドは「AIエージェント」。生成AIは注目を集め続け、進化し続けている。

 本書は、生成AIの現在地とそれがビジネス実装された後の未来地図(アフターAI)を端的にまとめた一冊だ。AIの進化が人間の仕事を支援する「コパイロット」から、自律的に業務を遂行するAIエージェントへと向かっていると解説。これにより、これまでROIが見合わずに自動化されてこなかった膨大な「ロングテール業務」の自動化が可能になると示唆する。顧客対応からマーケティング、営業、さらには医療や金融といった専門領域まで、具体的な事例を交えて「未来地図」が描かれており、非常に解像度が高い。

 著者は、AI時代に世界で真の競争優位性になるのは、「現場の暗黙知」と「泥臭い業務データ」だとみる。少子高齢化という課題を抱える「課題先進国」の日本だからこそ、AI活用の切迫感があり、現場に眠る膨大なデータこそが世界と戦うための「宝の山」になるという提言は、日本のビジネスパーソンを勇気づける力強いメッセージに感じた。

 単なる技術書ではなく、アフターAIと呼ばれる時代を企業や個人がどう生き抜くべきかという戦略と思想を提示している。(緑)
 


『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』
シバタナオキ、尾原和啓  著 
日経BP 刊 2420円(税込)
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