▼連休中、あるバンドのコンサートに出かけた。会場にあった貼り紙を見て、一瞬目を疑った。「撮影はスマートフォンのみ。フラッシュはご遠慮ください」と書かれている。メジャーなアーティストの有料ライブ演奏では「撮影禁止」の札が掲げられることが多いが、この公演では、他の観客の妨害は当然禁止するものの、客が撮ることはむしろ前提としていたのだ。
▼しかし考えてみれば、多くのアーティストは、オンライン配信サービスを通じて作品を発表しており、月額料金すら払わずに聴ける楽曲も多い。実際にこのバンドも、ほとんどの曲をYouTube上で公開している。一方、ライブの魅力は空気を震わせる圧倒的な大音量、映像や照明を含めた演出、そして場の熱気にあり、これらは現地に足を運ばなければ体験できない。
▼海外から招いたバンドのため、チケット代は1人2万円と高額。演奏されたのは全曲ネット上では無料で聞けるものだった。それでも音が鳴った瞬間、現地に来る意味はすべて理解できた。誰かがSNSに投稿した動画を見ても、この体験は得られない。配信が当たり前になった時代、人はむしろ「現場」にお金を払うようになった。(螺)