次世代リーダーを育てる
2026年は「ジャズの帝王」と呼ばれた希代のトランペッター、マイルス・デイビスの生誕100周年である。バンドメンバーを入れ替えながら、65年の生涯の中で、クールジャズやモードジャズ、フュージョンなど、モダンジャズに新しい方向性を打ち出し続けたことは驚異的だ。
その革新性は、どこからきたのか。本書は1950年から60年代にかけて交代でマイルス・バンドを支えた4人のピアニストを通して分析する。各ピアニストが在籍期間中に、独自の演奏スタイルを掘り下げたことでバンド全体にも大きな変化をもたらしたというのが、著者の見立てだ。演奏手法やリズムの取り方など、それぞれが磨いた特性がバンド全体に創造性をもたらしたと言える。
必ずしもピアニストには限らないが、マイルス・バンドの特徴的な点として、無名だったり、一回りも若かったりするメンバーでもバンドに起用している点が挙げられる。例えば本書でも挙げられるビル・エヴァンスやハービー・ハンコックのようなピアニストは、マイルス・バンドを脱退した後、自身をリーダーとするバンドを結成して著名になっている。本書からは次世代リーダーを育てる先導者としての手腕も垣間見える。(石)
『ピアノから聴くマイルス・デイビス モダンジャズのリズムセクション』
マイク・モラスキー 著
岩波書店 刊 1034円(税込)