数値を感情に変える技法
「なんと スライムが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!」
ゲームファンであれば、すぐに「ドラゴンクエスト」を思い浮かべることだろう。同作品をつくった堀井雄二氏は、わずかなデータ容量しか使えなかった時代に、力強くかつ親しみやすい文章表現を生み出した。
この独特のセリフ回しが作品の魅力になっているのはもちろんだが、ドラゴンクエストにはもう一つの大きな功績がある。それまで視覚表現に依存していた家庭用テレビゲームの楽しさを、「HP(ヒットポイント)」などの数値に置き換え、そこに感情を宿らせるのに成功したことだ。
本書は堀井氏自らが、何を考えてドラゴンクエストを設計してきたかを、パラメーターも含めて公開する解説書だ。例えば、動物的なモンスターは状況に関わらずワンパターンな攻撃を繰り返すのに対し、邪神のような強力な敵は、自身や相手の状態に応じて行動を変え、プレイヤーの“痛いところ”を突く。これにより、プレイヤーには数値情報だけでも敵の強さや恐怖が伝わる。「46ポイントの ダメージを うけた!」という表示を見て、子どもたちはなぜ「痛い」と感じたのか。本書は、その答えをゲームデザインの視点から解き明かしてくれる。(螺)
『堀井雄二のドラゴンクエストのつくりかた』
堀井雄二・塩崎剛三 共著
スクウェア・エニックス 刊 2200円(税込)