▼1981年、IBM PCにOSを提供した米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、サポートする最大メモリー容量について次のように発言した、と言われることがある。「640キロバイトあれば誰にとっても十分なはずだ」。640キロバイトは当時の一般的なPCと比べ10倍といった大容量だった。しかし、実際にはすぐに不足し、約4年後には拡張メモリー仕様を提供することになった。
▼ゲイツ氏自身はこの発言があったことを明確に否定しているし、信頼に足る記録も見つかっていない。デマの一つだろう。ただ、合理的かつ将来にわたり十分と考えられた膨大な物量が、テクノロジーの進化ですぐに足りなくなってしまうことは、歴史の中で繰り返されてきた。未来の需要を正確に見通すのは、先見の明がある人物にとっても容易ではない。
▼生成AIが世界の計算資源を食いつぶし、「これで十分」と言えるメモリー容量を定義すること自体が困難になった。ITの総需要は青天井に見え、「無限に売れる」産業になったかのようだ。果たしてこれは、需要の天井が消えた瞬間なのか。それとも、次の天井がまだ見えていないだけなのか。(螺)