現場仕事の賃金上昇を克明にルポ
労働者の報酬は「需要と供給で決まる」という面を、端的に示したルポルタージュである。建設や電気工事、接客、運送、農林水産などの現場で働く人の稼ぎを丁寧に取材し、少子高齢化に伴う労働者不足(供給不足)を背景としたブルーカラーの賃金上昇を克明にレポートしている。
興味深いのは、いくら人手不足でも一向に報酬が増えない現場仕事もあることだ。キャッチーな本書のタイトルとは裏腹に、例えば介護や保育など公的資金を原資とする職種では、予算の上限がそのまま給料の上限となる。民間の仕事であっても、多重下請け構造にあるトラック運転手は、訪日外国人旅行客の需要増で盛り上がるタクシー運転手ほど報酬が上がっていない。
大学進学率が60%近くに達し、間接業務やプログラム開発などの仕事がAIに代替されつつある今、ホワイトカラーの供給過剰が顕在化。賃金は学歴や所属業界、就職先の企業などに影響されるが、それと並んで「需給」も大きな要因となる。このままホワイトカラーの供給過剰が慢性化するようであれば、高卒で早くから現場に出て、手に職をつける道を選んだほうが、生涯年収を増やす上で有利になるケースが増えるというのが本書の着眼点である。(寶)
『ブルーカラー年収1000万円時代』
佐藤斗夢、大西孝弘 著
日経BP 日本経済新聞出版 刊 1210円(税込)