人を大切にした名選手
「ミスターラグビー」と呼ばれた平尾誠二。伏見工業高校、同志社大学、神戸製鋼で日本一を経験し、日本代表や指導者としても名をはせた。ラグビー・ワールドカップの日本開催に向けて尽力したものの、2016年に53歳で亡くなった。19年の開催を見届けることはかなわなかった。
平尾について書かれた本や記事は数多い。それでも本書は、「平尾誠二を語るならこの人」と名前が挙がる人物だけでなく、これまで深く掘り下げられてこなかった先輩、後輩、教え子、関係者にも丹念に話を聞いている。新しい人物像を描くというより、一つ一つの証言を重ねることで、「やっぱり平尾はこういう人だったんだ」と思わせる。
食事の場面の回想が興味深い。教え子に「俺にとっての一番の贅沢は、食べたいものを食べたい奴と食べることなんや」と語ったという。餃子やラーメンでも、誰と食べるかを大切にした。そこに、人への優しさや距離の取り方がにじむ。
神戸製鋼時代には、神戸市・御崎公園の新スタジアム構想にも関わり、コンセプトづくりから最終プレゼンまで担った。競技だけにとどまらない行動力。本書を読み進めるうち、華麗なステップでグラウンドを駆け巡る全盛期の姿が何度も脳裏によみがえった。(洛)
『評伝 平尾誠二』
村上晃一 著
講談社 刊 2310円(税込)