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パワーコンピューティング コーシャー社長突然の辞任 アップルとの関係悪化が表面化

1997/09/01 18:45

 マッキントッシュ(愛称マック)互換機メーカー最大手の米パワー・コンピューティング社のジョール・コーシャー社長が8月19日、突然辞任した。  同社長は昨年12月に米デルコンピュータからパワー社に移籍したばかり。声明文によると「アップルとのライセンス契約に関し、パワー社経営陣と関係修復不可能なまでの考え方の違いが明らかになったため」辞任を決意したという。同社長に代わり創業者のステファン・カーン会長が当面の間、日常業務を担当する。

 コーシャー氏は8月初旬にボストンで開かれたマックワールド・エキスポで、アップルコンピュータのライセンス契約を批判。アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の講演中にジョブズ氏批判のプラカードを掲げるよう参加者に働きかけた。

 ジョブズ氏はこれを無視し、講演のなかでライセンス問題に触れることはなかったが、アップルの関係者の1人は「公共の場でスティーブを非難してはいけない。そんなことをすればこの世界で長くやっていけない」と述べ、ジョブズ氏の圧力でコーシャー氏が辞任に追い込まれた可能性のあることを示唆した。

 その一方で、コーシャー氏はアップルの最高経営責任者(CEO)に就任するためにパワー社を退社したという憶測もある。前CEOのギルバート・アメリオ氏の更迭以来アップルによる後任探しが続いているが、コーシャー氏は最有力候補の1人としてこれまでマスコミに取り上げられることが多かった。しかしアップルの経営陣に近い筋は、「コーシャー氏には一流の経営能力はない」と語っている。

 さらにアップルがパワー社の買収を検討しているという一部報道があったため、コーシャー氏はそれを嫌って退社したとする憶測も流れている。
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