店頭流通

<BCN Report>ドン・キホーテの支援を仰ぐ第一家庭電器とそうご電器

2002/01/14 16:51

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 「ビッグコンビニエンス&ディスカウント」という新業態を標榜する新進気鋭の「ドン・キホーテ」が老舗の家電量販店「第一家庭電器」、「そうご電器」の2社と資本・業務提携することになった。ドン・キホーテが家電量販店2社の支援を行うことで合意に達したものだが、家電流通業界では以前からそうご電器と第一家庭電器の経営危機が囁かれており、現在の厳しい流通環境下、どの金融機関、メーカーが支援に回るのか注目されてきた。結局、ドン・キホーテという他業界からの支援で、2社の存続が何とか確保された形となった。この2社がいかに厳しい経営状況にあったのか、ドン・キホーテの損益と比較しながら分析するとともに2社の復活再生の可能性を探る。(福知泰彦●取材/文)

ドン・キホーテと資本提携へ

 資本提携は、第一家庭電器、そうご電器ともに第三者割当により発行する新株式170万株の全株式をドン・キホーテが引き受ける、という内容。そうご電器の場合は、第三者割当増資によりドン・キホーテが株式保有率5.03%の筆頭株主となる。

 提携内容をみると、(1)既存店の「ドン・キホーテ店」、「ピカソ店」への業態転換、(2)ドン・キホーテの新・既存店舗の家電売り場の一部を受託運営(第一家庭電器)、オキドキ事業部門へのドン・キホーテの支援(そうご電器)、(3)得意分野の共同仕入れ、(4)従業員の人事交流、(5)配送、工事業務等の協力体制など。

 すでに第一家庭電器は昨年12月1日、国分寺店を「ドン・キホーテ店」に業態転換しており、同月内には本八幡店も業態転換。一方、そうご電器も2002年2月、札幌店・YES札幌インターネット館を提携店舗にする予定だ。

3期連続の経常赤字、低い店舗・人員効率

 ドン・キホーテ、そうご電器、第一家庭電器はどのような状況にあるのか、まず売上高を比較する。前期決算でみると、ドン・キホーテが2001年6月期で売上高939億円、そうご電器が同3月期で467億円、第一家庭電器が同2月期で275億円。そうご電器、第一家庭電器の2社合わせても743億円とドン・キホーテの売上高には届かない。

 損益をみると、ドン・キホーテが70億2000万円の経常利益を挙げている一方、そうご電器、第一家庭電器はそれぞれ3億1100万円、19億9400万円の経常損失となっており、3期連続の赤字だ。

 店舗並びに人員効率をみると、直営店舗は、ドン・キホーテが35店舗、総人員692名であるから1店平均売上高は26億8500万円、1人当り売上高が1億3600万円となっている。

 一方、そうご電器店は158店舗、592名、第一家庭電器が137店舗、342名と数量的には豊富だが、1店平均売上高にすると、それぞれ2億9600万円、2億100万円とドン・キホーテの10分の1の売上規模。1人当り売上高でもそれぞれ7900万円、8100万円と効率が低い。

高い販管費率、人件費が足かせに

  それではそうご電器、第一家庭電器がどれほど厳しい状況にあったのか、改善の方向にあったのかを売上高総利益率、売上高販管費率の2点にポイントを当て比較する。

 売上高総利益率をみると、ドン・キホーテが22.3%、そうご電器が18.8%、第一家庭電器が14.6%となっている。“安売り王”と言われるドン・キホーテでさえ20%を超える粗利益を確保しているが、そうご電器と第一家庭電器の粗利益は低い。また、データリサーチ社調査の「2000年度 家電量販店有力店16社経営効率分析」によると、売上高総利益率平均が15.7%であるのに対し、そうご電器はそれを上回るが、第一家庭電器は1%程度下回っている。少なくてもこれまで利益幅の取れる商品を扱うなど、粗利益確保のための商品の選択にかけていたといえる。

 販管費率をみると、ドン・キホーテは15.8%と売上高総利益率に対し6.4%も低く抑えているが、そうご電器、第一家庭電器ではそれぞれ19.8%、21.0%と売上高総利益率をそれぞれ6.5ポイント、0.9ポイント上回っており、経費圧縮の跡が見られない。

 とくに販管費のなかでポイントは人件費だ。そうご電器をみると、36億8900万円、販管費に占める割合は40.0%、売上高対比で7.9%と高い。一方、ドン・キホーテは55億5300万円、販管費に占める割合が37.30%、売上高対比で5.9%と抑えられている。

 ドン・キホーテが人件費を低く抑えられるのは平均年齢27.0歳、年間平均給与479万円という低賃金に支えられている。そうご電器や第一家庭電器の場合は、そうはいかない。

 結局、そうご電器、第一家庭電器は営業利益を出せる状態にはなく、この状態が3年間も続いており、収益を上げる構造への改善が進んでいない。

リベート依存からの脱却、2社を再起に導けるか

 各社損益比較表をみると、メーカーへのリベート依存が見える。営業外収益に計上されている販促協賛金がそれだ。リベート依存体質は家電流通業界に見られる特徴で、そうご電器、第一家庭電器の2社に限ったことではない。だが、ドン・キホーテが売上対比0.1%であるのに対し、第一家庭電器、そうご電器はそれぞれ1.4%、1.0%といずれも1ケタ違う。それだけメーカーへの依存度が高かったと言える。

 この部分をドン・キホーテがいかに第一家庭電器とそうご電器に認識をもたせるのか、注目されるところではある。また、2社に対し最初に手をつけなければならないところは、店舗の大幅な見直し、統廃合と人員整理だろう。

 店舗については、基幹店舗を存続させ、小規模店舗を閉鎖していく必要があるだろう。人員整理については、人員の入れ替えをスムーズに展開できるかがポイントとなろう。

 家電流通業界では、コジマ、ヤマダ電機を筆頭に各量販店生き残り競争が激化の方向にある。また、デオデオ、上新電機、エイデン、ミドリ電化の4社連合といった生き残り戦略が展開されている。果たしてそうご電器、第一家庭電器はドン・キホーテからの経営支援を得て復活できるのか、まだまだ前途多難と言えよう。
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