店頭流通

ソニーマーケティング バイオの独創性を極める 「家庭と女性」、「子供」、「AV」

2002/01/14 18:45

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 登場から今年で5年目を迎えるソニーの「バイオ」。現場営業の統括責任者、ソニーマーケティングの渡邊敏夫執行役員バイスプレジデントは、「5年という時間はバイオ事業にとって1つの節目。事業を改めて見直す時期である」と謙虚に答える。ノート型に比べ、バイオの“泣き所”であったデスクトップ型についても、昨年後半にジワジワとシェアを拡大。年末の12月には台数シェア30%を優に超え、金額シェアは台数シェアより数ポイント高い結果を残した。渡邊執行役員は、今年のバイオ事業の方針として「1台1台のバイオを、ソニーのラジオやウォークマンのような息の長い商品に育てたい」と、製品サイクルが3か月と短く薄利多売のパソコンビジネスそのものを変えていく考えを示す。

 「5周年の節目にふさわしい、斬新なバイオづくりに力を入れる。5年前、バイオ事業を始める際、上司から『トップシェアを獲るか、独創性のある商売のどちらかの道を選べ。中途半端はよくない』と指示を受けた。これからも、バイオの独創性を堅持し、トップシェアは獲っても、中途半端なパソコンを作る予定はない」と意気込む。

 新春第1弾で発売予定の「バイオW」のWは、「WATANABEのWと言っていいほどの自信作だ。男性・女性を問わず、幅広い利用者の支持を得られる。まさに5周年となる今年最初の発売にふさわしい新製品」と自信満々だ。

 昨年後半から、ソニーならではの音楽と映像を取り込んだバイオでトップシェアを取っている。しかし、これはNECや富士通が、弱含みの一般消費者市場を恐れて出荷台数を絞り込んだなかでの躍進でもある。

 今年は、各社ともに「昨年並みの市場規模で横這いか微増」を合い言葉に、それなりのまとまった台数を出すことが予測されるだけに、引き続きトップシェアを獲り続けられるかどうかは、ソニーマーケティングの販売戦略の成否如何にかかっている。

 渡邊執行役員は、「5年前、バイオを作るとき、ワードやエクセルを載せただけの普通のパソコンでは、NECと富士通に絶対勝てないことは明白だった。これは今でも同じ。NECや富士通と同じ路線では、コンピュータ専業の彼らにはやはり太刀打ちできない。5年目の今年、私自身は“ニューバイオスタイル”と呼んでもいいんじゃないかと感じるほど、大きく商品コンセプトを変えた新製品を続々と投入する。これでバイオの躍進を続ける」と、他社をさらに突き離す秘策を準備する。

 ニューバイオスタイルのキーワードは、(1)家庭と女性、(2)小中学校に通う子供たち、(3)従来通りのAV(音響・映像)との融合――の3つ。

 このうち第1のキーワードについては、「ユビキタス・コンピューティング、つまりどこでもパソコンの名の通り、家庭の至るところにパソコンのようなものが浸透する。今年はデスクトップとノートの境界線、あるいはB5ノートと携帯情報端末との境界線がますます曖昧になる。例えばキッチンにぴったりのパソコンになるようなマーケティングをする」。

 「2番目に、新しい学習指導要領の影響を受けた小中学校の子供たちが使うパソコン市場も、大きく変化する。多種多様なメディアに囲まれて育った今の子供たちに、単純でつまらない教育ソフトを載せたパソコンを売り込もうとしてもダメ。バイオならではの、創造性と娯楽性を持ち合わせた子供用パソコンの開発に力を入れる」。

 「3番目のAVは、パソコンとは売り方がまったく異なるAV商品を、パソコンと融合させて売る難しさがある。ある程度の手応えは得つつあるものの、引き続きじっくり時間をかけて取り組む。また、AVだけに限ったことではなく、バイオ全体で製品周期が長い商品をつくる。3-4か月で機種変更をし、短命で終わるのではなく、製品寿命を延ばし、収益性が高い事業に育てていく時期に来ている」と話す。
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外部リンク

http://www.sony.co.jp/SonyDrive