店頭市場ピックアップ

ビジネスソフト販売動向 特定商品と分野に人気が偏る

2002/05/13 16:51

週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載

 不振が伝えられているソフトの販売だが、この1年の動きを追うとほぼ前年並みで推移している。ただし、特定商品への偏重傾向が強まっている。例えば、店頭の人気商品であるはがき作成ソフトの最需要期にあたる12月は、販売金額、販売本数ともに指数は大きく上昇する。また、店頭で販売されているソフトのなかでは単価の高いマイクロソフト オフィスXPが発売になった昨年6月は、ほかの月と異なり販売金額が販売本数を大きく上回った。売れ筋は限られた商品に絞り込まれ、それ以外のソフトの売れ行きは厳しい状況にある。

市場全体では前年並み傾向続く



 パソコン本体の販売不振と相まって、大半のソフトメーカーから「パソコン本体と同様、ソフトの売れ行きも厳しい」という声があがっている。しかし、店頭で販売されているビジネスソフトの販売動向を調査すると、昨年と今年を比較してもそう大きな差があるわけではない。図は、昨年4月のデータを母数として、OSを除くビジネスソフトの販売本数、販売金額の指数推移を示したもの。1年前と現在を比較してみると、ほぼ前年並みの水準をキープしている。それにもかかわらず、「ソフトの売り上げが厳しい」との声があがるのは、前年4月時点ですでにパソコン本体の販売不振が始まっていたことに加え、特定商品に売れ筋が偏重する傾向が強くなっていることが原因。

 具体的な例をあげると、ここ数年、1年間で最もソフトが売れる時期は12月となっている。これは、はがき作成ソフトの販売が12月前後に集中しているためだ。パソコン本体の商戦でも12月を頂点とする年末商戦が1つのピークとなっており、それを後押しするようにはがき作成ソフトの売れ行きは12月がピークとなり、ソフト全体の販売も大きく上昇する傾向が出ている。最近売れ行きを大きく伸ばしているセキュリティソフトも、12月がピークとなっている。昨年12月のビジネスソフト全31ジャンルのなかで、販売本数でははがき作成ソフトの占める割合が最も高く、27.64%を占めるものの、金額ではセキュリティソフトの割合が21.3%で、はがき作成ソフトの13.8%を大きく上回る。12月のソフト市場は、はがき作成ソフト、セキュリティソフトという2つの分野が全体を大きく引き上げた格好だ。

 昨年6月はほかの月と異なり、販売金額の指数が販売本数の指数を大きく上回っている。これは、6月8日に「マイクロソフト オフィスXP」が発売されたことによるもの。オフィスXPは店頭で販売されているソフトのなかでは単価が高い商品。発売月である6月にオフィスXPが大きく売り上げを伸ばしたことで、販売金額指数が本数指数を大きく上回る結果となった。ソフト市場が人気商品の販売動向に大きく左右されるのは、売れ筋が特定商品に偏っていることの証左だ。ごく少数の分野、商品のみが人気を集め、それ以外の製品の売れ行きは伸び悩んでいる。同じ時期であっても、あるメーカーは「売れ行きは好調」と答え、異なるメーカーからは「売れ行きは不調」と正反対の答えが返ってくる。

 販売店としては、売れ筋をきちんと見極め、商品管理を徹底していく必要があるだろう。分野ごとの違いや商品の売れ行きの差をきちんと把握した売り場作りが重要だ。ソフトメーカーにとっては、売れ筋商品を研究し、開発に反映させていくことが必要だ。店頭で人気を集める商品は時期によって大きく異なる。デジタルカメラ用画像処理ソフトのように、デジカメの売り上げ上昇に合わせ需要が拡大するジャンルもある。ソフト以外の商品の需要動向を良く見極めた開発体制を作る必要があるといえるだろう。(三浦優子)
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