店頭流通

はがき作成ソフト市場が変わる メーカーのシェア争いが激化

2002/07/01 16:51

週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載

 はがき作成ソフトの主要メーカーが熾烈なシェア争いを演じそうな気配だ。アイフォー、アジェンダ、クレオ、富士ソフトABCの4社は、宛名情報の標準データフォーマットにXMLベースの「コンタクトXML」を採用し、各社それぞれの販売戦略でシェア拡大をにらむ。「コンタクトXML」は、システムやデータの管理形態に依存せず、データ連携を容易にするため、手軽に他社ソフトへの乗り換えが可能となる。はがき作成ソフト市場は、年末や夏商戦などに需要が急伸する特性をもつが、年間で均せば成熟した市場との見方も多い。年末商戦に合わせ、「コンタクトXML」搭載ソフトを発売するメーカーが相次ぐ見通しで、激しいシェア争いが予想される。

「コンタクトXML」でデータ連携可能に

●各社、ソフト拡販を模索

 アイフォー、アジェンダ、クレオ、富士ソフトABCの4社は、「コンタクトXML」を採用することで、はがき作成ソフトの拡販体制を整える。

 アイフォーの営業統括部マーケティング部広報・PRグループ・岡田誠氏は、「プロジェクトチームを結成し、『コンタクトXML』を活用して何ができるかを模索している段階」と話す。

 アジェンダの製品企画部・豊沢保樹部長は、「ビジネスチャンスが広がるというよりは、多くの住所録フォーマットに対応しておいた方が顧客の利便性が高まるという点で採用した。また、新・旧バージョン間という自社ソフトウェア内での互換性確保にも役立つ」としている。

 クレオでは、コンシューマ向けでの販売に加え、企業向けビジネスの拡大も視野に入れる。常務執行役員・大森俊樹プロダクトサービス事業部長は、「顧客データや社内名刺情報の管理用に、はがき作成ソフトを使用しているビジネスマンが多い。この点に着目し、今後は、社内基幹システムや情報管理システムとの連携など、はがき作成ソフトをフロントエンドとした新しいサービスやシステムを提供していく」と強調する。

 富士ソフトABCでも、「これまでは、人員の関係上こなせなかった案件もあったが、『コンタクトXML』を採用すれば、より多くの案件をこなせるようになる」(IT事業本部ITソリューション部・藤原章裕リーダー)と、企業向けビジネスに積極的だ。

 年末商戦に合わせ、今年末までには、アジェンダとクレオ、富士ソフトABCの3社が「コンタクトXML」搭載のソフトを発売する。一方、アイフォーでは、「各メーカーの出方を見てから投入する」(岡田氏)と、様子見の状況だ。

●ユーザー囲い込みが困難に

 「コンタクトXML」は、電話番号や住所など、ビジネスで必要な連絡先を記述するための標準的なXMLフォーマット。宛名管理ソフトをはじめ、名刺管理ソフト、メールソフト、個人情報管理ツールなどの間のデータ連携を容易にする。

 「コンタクトXML」搭載のはがき作成ソフトが発売されれば、ユーザーは特定メーカーのソフトを買い続ける必要がなくなり、ほかのメーカーのソフトに買い替えても、データを容易に変換することが可能となる。そのため、メーカーはユーザーを囲い込むことが難しくなり、シェア争いが激化することは必至だ。

 図は、最近6か月間のはがき作成ソフト市場のメーカー別販売台数シェアを表したものだ。市場では、クレオがトップシェアを維持、アイフォー、アジェンダ、NECインターチャネル、富士ソフトABCなどがこれに続いている。

 また、BCNランキングによると、前年同月比で昨年12月が数量ベースで2%減、金額ベースで6%減。今年5月は、数量ベースで1%増、金額ベースで4%減という結果。こうした動向からみれば、現状は成熟した市場だ。

 各社が「コンタクトXML」搭載に乗り出すことが単なるパイの奪い合いに終わるのか、それともビジネス分野を中心に付加価値サービスを生み、新たな市場創造につなげることができるのか。各社の知恵の絞り所でもある。
  • 1