店頭流通

伸びるカメラ付き携帯 小型メモリで競合本格化

2002/08/26 16:51

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

今年7月、相次いで小型メモリカードが発売になった。ソニーが発売した幅20×奥行き31ミリ、重さ2グラムの「メモリースティックDuo」と、オリンパス光学工業、富士写真フイルムが開発した幅20×縦25ミリ、重さ2グラムの「xD―Picture Card」である。小型メモリカードとしては、メモリースティック自身も十分に小型といえるサイズだし、コンパクトフラッシュ、SDカードといった製品もあるわけだが、それにも関わらず、さらに小さいメモリカードを開発した理由をメーカー側では次のように説明する。(三浦優子●取材・文)

  「記録メディアのサイズを小型化したことで、一層小さくしたデジタルカメラの開発が可能となる」(富士写真フイルム・古森重隆社長)しかし、それ以上に意識しているのは、カメラ機能を搭載した携帯電話への搭載ではないか。カメラ機能付き携帯電話の普及は著しい。今年5月、NTTドコモが加入者数純増で初の3位に転落したが、この背景には「写メール」でユーザーの支持を得たJ―フォンのカメラ付き携帯電話の躍進があった。

 J-フォンは8月9日時点で、写メール対応端末の出荷台数が600万台を突破したと発表。順調にカメラ付き携帯電話の出荷台数を伸ばしている。また、NTTドコモ、KDDIもカメラ付き携帯電話を相次いで投入。後発ではあるものの、NTTドコモのカメラ付きiモードの契約者数が100万を超えるなど、カメラ付き機種は停滞していた携帯電話市場の活性化に大きな役割を果たしている。

 この状況を黙って横目で見ていられなくなったのがデジタルカメラメーカーだ。カメラ付き携帯は今後さらに増加していくとの見方が圧倒的で、矢野経済研究所では2002年度の携帯電話の出荷台数4195万台のうち、約半数がカメラ内蔵モデルになるとの試算を出している。これに対しデジカメの出荷台数は、日本写真機工業会によれば01年実績が1475万台、02年の予測が1900万台となっている。短期間のうちに、カメラ付き携帯電話の出荷台数がデジカメに迫ろうとしている。

 もっとも、デジカメとカメラ付き携帯電話は機能的な違いがあり、はっきりと棲み分けされることは間違いない。現在、店頭で売れ筋となっているデジカメは、小型ながら光学3倍ズームを搭載したモデルで、実売価格が4万円台。いくら携帯電話のカメラ機能を向上させても、短期間のうちに現在の売れ筋デジカメのレベルまで追いつくとは考えにくい。ただし、「トイデジカメ」と呼ばれる低価格で機能を抑えたデジカメ市場は、カメラ付き携帯電話マーケットが飲み込んでしまうのではないか。しかも、小型メモリを搭載したカメラ付き携帯が増えれば、ユーザーの利便性は大きく向上する。

 トイデジカメを使っていた層ばかりでなく、さらにデジカメとパイを食い合う市場が増えることが予測される。デジカメメーカーとしてもそう安穏とはしていられない状況だ。販売店にとってデジカメは、顧客を店に呼ぶ大きな力となってきた。今後、カメラ付き携帯とデジカメ市場の競合激化が販売店にとってプラスか、マイナスか、気になるところである。プラスとして考えると、小型メモリを搭載した携帯電話が増えれば、携帯電話のアフターマーケットが増大していく可能性がある。期待されながらも需要が伸びないFOMAよりはるかに早く、新たな市場ができ上がるのではないか。
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