店頭流通

デジタル家電、標準化の道遠し

2003/07/14 16:51

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

 世界の家電・IT大手17社はこのほど、デジタル家電とコンピュータ機器をシームレスに接続するホームネットワーク技術の標準化団体「デジタルホーム・ワーキンググループ(DHWG)」を発足させた。だが、ディスクへのデータ格納規格やデジタル著作権管理技術(DRM)などの分野は、企業の戦略的な思惑が交錯し標準化には程遠い状態だ。

ホームネットワーク標準化団体発足

  同団体をまとめ上げたのは米インテル。同社は昨年9月のインテル・デベロッパー・カンファレンスの開催期間中に、パソコン機器とデジタル家電機器の互換性確立に向けて努力するという約束を米マイクロソフト、ソニーの両社から取り付けている。

 パソコンと家電のデータ互換性が向上すれば、デジタルホームネットワーク時代が一気に到来し、より多くの機器が売れる。多くの機器がインテルの半導体を搭載することになるだろうから、同社としてはそうした時代の到来を待ち望んでいるわけだ。

 ところが今年に入っても、マイクロソフトとソニーの間に協力的な姿勢はみられない。それどころかソニーは今春、ディスクへのデータ格納規格の分野でマイクロソフトが推進する技術と対抗する技術の採用を決めた。

 ソニーが採用を決めたのは「MPV(ミュージック・フォトグラフ・ビデオ)」と呼ばれるもので、音楽や映像をCDやDVDに記憶させる際のファイル名や手順を標準化しようという規格。

 もともとは記憶媒体の標準化団体OSTAが開発したデジタル写真のデータ格納規格を音楽などのデジタルデータにも拡大・応用したもの。規格開発には、写真大手のイーストマン・コダックやヒューレット・パッカード、ロイヤル・フィリップス電子、サムスン電子などが協力している。

 ところがマイクロソフトは昨年10月に、松下電器産業とともに「High MAT」と呼ばれる対抗技術の開発計画を発表している。ソニーがどちらの陣営につくか注目を集めたが、結局MPV側につきマイクロソフトと袂を分かつ形となった。

 一方、データ格納よりも深刻な標準化問題はデジタル権利管理技術(DRM)。パソコンの世界では、米リアルネットワークスのリアルプレーヤーのシェアをマイクロソフトのメディアプレーヤーがかなり侵食し、標準再生ソフトの座に王手をかけている。

 一方、家電の世界では、ソニー、AT&Tドルビー研究所などが共同開発したDRMが、国際的な標準化団体の認可も受け主流になりつつある。米アップルコンピュータの音楽配信サービスも採用している。

 インテルは同社サイト上で「(新標準化団体DHWGは)特定の著作権保護技術を支持するものではありません。互換性確立に共鳴する人たちが、協力し合うことを希望します」と記述している。しかし、ただ希望するだけでは、標準化は前に進まない。(湯川鶴章)
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「DLNA」=http://www2.dlna.org/