店頭流通

携帯オーディオ市場 幅広いユーザーを取り込め!

2003/09/08 18:45

週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載

 携帯オーディオメーカー各社が、新規需要の開拓に必死だ。携帯オーディオの購入者はパソコン上級者が大半で、メーカーは初級者の購入比率を高めるためにあの手この手の拡販策を進めている。BCNランキングによれば、携帯オーディオ市場の成長は続いている。しかし、メーカー各社は「購入者はまだまだ絞られている」として、さらなる市場拡大のために「ユーザーの裾野の拡大が必要」との見方で一致している。

拡販策打ち出すメーカー各社

  アップルコンピュータは、「iPod」の取扱店を順次増やしていく作戦。パソコン専門店や家電量販店に対して、「MDコーナー」に同製品を展示するようアプローチをかけており、露出度を高めることで購入意欲を煽っていく。

 iPodはこれまで、「Macコーナー」があるパソコン販売店600店での販売が中心だった。しかし、iPodにはウィンドウズ対応モデルもある。そこで、Macコーナーから脱出してより広いユーザーにアピールしていくという。

 木日出夫・アップルコンピュータ・コンシューマセールス本部長は、「iPodを多くの消費者に認知させる」としており、「年末までに取扱店を1500程度に引き上げたい」と話す。

 また、アマゾン・ドットコムなどネットショップでの販売も強化。取扱店の増加に対応するために「生産ラインの改善も行っていく」としている。

 松下電器産業では、SDメモリカード対応の携帯オーディオ「SD50」と「SD80」の2機種を売り込む。すでに4月からトヨタ自動車の情報ネットワークサービス「G-BOOK」を活用した音楽ダウンロードサービスも開始した。

 「携帯オーディオ市場は過渡期に入った」とする笠浩・松下電器産業コミュニケーショングループ広報チームリーダーは、デジタルカメラやデジタルビデオ、携帯電話などで使われているSDメモリカードの利便性を強調。「さまざまな機器で使えるメディアに対応させることで、需要が増えていく」と優位性を語る。

 ソニーマーケティングでは、「ウォークマン」の名称で、フラッシュメモリ内蔵の機器やMD、CDなどに対応した携帯オーディオを発売している。なかでも、Atrac3plus/MP3再生に対応したCDウォークマンが、「一般消費者の間でネットワークオーディオの用途を広めるきっかけになる」(古賀拓郎・ソニーマーケティング・パーソナルAVマーケティング部パーソナルAVプロダクツMKグループ)とみている。

 同社では、Atrac3plus/MP3再生対応のCDウォークマン「NE1」や「NE9」などをショップの「オーディオコーナー」で販売している。しかし、一般的にネットワーク対応の携帯オーディオプレーヤは価格が高いという傾向があり、展示しても注目度は低い。

 そのため、ネットワーク対応の有無に関わらず、戦略的に同じ価格で提供している。「購入する際は、音楽のダウンロードを目的にしなくても将来的に必要だと提案する」ことで売り込みを図る。

 東芝では、HDDオーディオプレーヤー「ギガビートG20」を10月中旬から発売する。毛塚英夫・東芝デジタルメディアネットワーク社映像システム事業部デジタルカメラ部企画・商品担当主務は、「1か月平均で5000台の販売台数を目指す」考え。ウェブ上で対象をはっきり見せずに興味を煽るティーザー広告を行うことで、ユーザーの関心をかきたてる戦略で、「広告へのアクセス数は、1日平均で2万件を超えている」と、手応えをつかんでいる様子。

 図は、今年1-8月の携帯オーディオ販売台数の前年同月比推移(BCNランキング)。これを見ると、順調に成長している。しかし、市場をさらに拡大するためには、より広いユーザー層を獲得していかなければならない。しかし、その突破口がなかなか見出せないのも事実。まずは「知ってもらう」ことから始めるしかないようだ。
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