店頭流通

ハガキ作成ソフト市場 はやくも冬商戦へ突入

2003/09/22 18:45

週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載

 ハガキ作成ソフトメーカー各社が、初心者層への拡販に力を入れ始めた。同市場では、すでにソフトをもっている既存ユーザーが多く、年賀状需要も年々減少傾向にあるなど、成熟感は否めない。だが、高齢者や若年者など、まだまだ裾野拡大の余地はある。この冬商戦に向け、簡単操作やデジタルカメラ対応機能の強化、低価格によるアピールなど、各社ともあの手この手の戦略を練る。1年を通じ売れ行きがピークを迎える冬商戦が、新規需要掘り起こしの天王山でもある。

各社、初心者層の開拓へ

 クレオは、2003年冬商戦向けのハガキ作成ソフト「筆まめVer.14」シリーズで、通常版に加え、赤金の顔彩と筆のセット、和風のインクジェット用ハガキ用紙などを同梱した「筆まめ 豪華版 匠」を新しく市場投入した。

 萩原義博・コミュニケーション事業本部筆まめソリューション部BBビジネスグループマネージャ兼企画開発マネージャは、「ハガキ作成ソフトの購入者は40歳代を中心とするビジネスマンが大半。しかし、機能面で“こだわり”をもつといわれる高齢者もユーザーとして獲得するため開発した」と、製品化の背景を語る。

 しかも、冬商戦向け製品の発売を今年は9月19日に早めた(昨年は10月上旬)。住所録機能などは年賀状作成以外でも活用できることを訴え、住所録需要と年賀状需要という切り口で、2種類の店頭プロモーションを計画している。

 アイフォーは、9月19日発売の最新バージョン「筆王2004 for Windows」で新規ユーザーへの拡販を狙う。ターゲットは30歳代のファミリー層。パソコンの画面上でカーソルが自動的に移動してガイドを行う「操作手順ナビ」や、マニュアル本に記載されたヘルプ番号を入力すると関連した情報を表示する「番号呼び出しヘルプ」などのサポート機能を強化した。

 田所政司・社長室営業企画部長は、「昨年冬のハガキ作成ソフト新規購入者のうち、過半数が筆王を選択した」と自信をみせており、10-12月の3か月間で前年同期比約25%増の50万本の販売を目指す。

 富士ソフトABCでは、「ここ数年は、デジタルカメラの写真データをパソコンに取り込み、画像を加工してオリジナルの年賀状を作るユーザーが増えている」(岡野正幸・IT事業本部筆ぐるめ室長)ことから、9月26日に発売する「筆ぐるめVer.11」でデジカメ写真を自動で補正する機能を新しく搭載した。

 「筆ぐるめ」は、パソコンへのバンドル率が60%前後を占め、「高齢者を中心に需要がある」(岡野室長)という。デジカメ機能の追加で、「デジカメユーザーによる購入」(同)を期待する。10-12月は、販売本数で15%前後のシェア維持を見込む。

 マイクロソフトも、「デジカメ需要の拡大に対応して、ハガキ作成ソフトの販売も増やしていく」(五十嵐章・執行役員パーソナルシステム事業部長)方針。同社では、ハガキ作成ソフトを購入したものの実際には活用していないユーザーのうち、約80万世帯がD.P.Eショップに写真付き年賀状を依頼しているとみており、その需要を掘り起こす。9月26日発売の「マイクロソフト はがきスタジオ バージョン2004」は、プロのデザイナーが作成した300点の写真入りはがき専用テンプレートのほか、複数のデジカメ画像の一括自動補正機能などを搭載している。

 ソースネクストは昨年1年間、年賀状作成ソフトの販売を中止していた。しかし、「ハガキ作成ソフトは、ビジネスソフトのコモディティ化に対応する当社の戦略において重要なアイテム」(藤本浩佐取締役)とし、「筆休め」を9月12日に発売したのを機に、再度ハガキ作成ソフト市場に参入した。「5分で年賀状が作成できるという簡単操作と1980円の低価格」(同)を武器に、10-12月の販売本数を約30万本と見込む。

 BCNランキングによると、今年8月のハガキ作成ソフト販売動向は、本数ベースで前年同月比3%減、金額で同6%減。極端な落ち込みはないものの、既存顧客の多さから、「成熟している市場」との見方は強い。

 だが、「ハガキ作成ソフトを購入していない需要層はまだまだ多い」と各社が口を揃えるように、初心者層へのアプローチ次第では、市場拡大の余地は残されている。
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