店頭流通

エレコム メディア・AV関連機器に参入

2004/07/12 18:45

週刊BCN 2004年07月12日vol.1047掲載

 エレコム(葉田順治社長)は、国内事業の成長性持続と将来の海外事業強化を狙いに、新たな商品分野に打って出る。商品開発力やSCM(サプライチェーンマネジメント)、販売店・顧客サポートなどの整備で、企業としての基礎体力は向上したものの、既存商品への依存度が強まると成長戦略は描けない。このため、サプライ品やファニチャ、アクセサリに加え、新たにメモリ・メディアやAV(音響・映像)関連などの製品を投入。国内での総合的なブランド力向上を図る。同時に、新商品立ち上げのノウハウを習得することで、巨大市場・中国を中心とするアジアや欧州への事業展開にも生かしていく考えだ。

第1弾はメモリモジュール

 新たなカテゴリー商品の第1弾となるのは、パソコン向け増設メモリモジュール。デスクトップパソコン向けとノートパソコン向けを合わせて約20種ラインアップし、7月15日に発売する。動画の再生や編集など、パソコンで扱うデータ量が増大しているのに加え、DRAMの受給バランス改善で価格面でも安定化が見込まれる。さらに、エレコムの販売ネットワークが法人向けにも広がっており、商品ラインアップに加える必要があると判断した。

 今後は順次、メモリモジュール製品の拡充を図るとともに、今秋をめどにUSBフラッシュやSDメモリカードなども投入し、「メモリ・メディア」の新しいカテゴリーを確立する方針。

 エレコムでは、1990年代半ばにメモリ製品の販売を手がけ、年商50億円レベルにまでに育てた経緯がある。その後、マウスやキーボードといったサプライ品など、現在の主力商品の強化を優先してきたが、マーケティングやSCMなどの精度も向上し、価格変動リスクなどもヘッジできる体制が整備できた。

 メモリ製品は、機能面では差別化しづらく、今年度(2005年3月期)のメモリ・メディア製品の販売目標は約5億円と控えめ。しかし、メディアも含めた幅広いラインアップを提供することで顧客や販売店などのニーズに対応し、圧倒的なシェアを維持しているバッファローやアイ・オー・データ機器を追撃する。

 一方、AV関連では、従来のケーブルといったアクセサリから、より機器に近い分野に展開していく考え。すでにパソコン向けスピーカで蓄積したノウハウを活用し、アップルコンピュータの携帯オーディオプレーヤー「iPod」などをターゲットにしたスピーカシステムを販売しているが、今月中には電源を用いずにスピーカとしても使用できる特許申請中のオーディオ向けイヤホン「イヤホルン」を発売する。

 具体的な商品は明らかにしていないが、この他にもマーケティング力や企画開発力を生かしたAV関連機器の開発を進めており、今年度中には複数の商品を発売する計画だ。

 販売チャネルについては、従来の家電量販店やパソコン専門店を中心とした効率的なチャネルが確立されているため、リスクをともなうチャネル開拓の必要はないとみている。ただし、製品の取り扱いを求める引き合いはあるため、状況に応じて対応していく。

 エレコムでは、90年代後半から企業体質の改善を進めており、マーケティングや商品企画・開発、サポート、ロジスティクスなどの整備を進めてきた。販売についても、重点強化商品を設定する形でマーケットでのプレゼンスを高めてきており、「BCN AWARD 2004」においてもマウス、キーボード、USB、スピーカ部門で4冠を達成している。

 管理や販売に加え、商品の企画・開発要員も従来の約2倍となり、全社員の30%近くを占めるなど社内体制が整ったことから、事業の成長性持続のため新たな分野に参入し、国内事業の拡大を図ることにした。

 加えて、日本市場で成長分野の商品を立ち上げることは、将来の海外事業へのフィードバックも期待できる。03年3月のロンドン、同年7月の韓国に続き、今月は中国・上海にも現地法人を設立した。上海現法は、将来的に中国市場向けの統括会社の位置付けもあり、巨大市場・中国に打って出る橋頭堡ともなる。海外事業が軌道に乗れば、商品の生産ロットも大きくなり、コストメリットも得られる。

 国内で総合サプライヤーとしてのブランド力を高めることで、海外の成長市場の獲得に結びつける狙いがあるとみられる。
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