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<BCN REPORT>Mac World Expo開催 ユーザー層の広がりが顕著に
2004/07/26 18:45
週刊BCN 2004年07月26日vol.1049掲載
iPod人気が牽引
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今年の会場は、2004年7月に竣工したばかりの、ボストン・コンベンション&エキジビションセンター(BCEC)だ。移転の背景には、同じくボストン郊外に本拠地を構えるIDGによる行政への配慮が見え隠れする。移転に関しては、すでに02年10月の時点でアップルからの反発が表面化し、最後のニューヨーク開催となった昨年の会期直前には、翌年以降のアップルの不参加が確実視されていた。そして強引に会場を移転した今年は、遂にアップルの不参加が現実のものとなった。
アップルの不在は、イベントに大きな影を落とした。出展企業はサンフランシスコでのイベント(04年1月6-9日)では240社だったが、今回のボストンは80社程度。しかも直前まで出展勧誘を続けていたためか、ブース案内のパンフレットは粗雑なコピーを配布。しかも記載が間に合わなかった出展社もあった。集客も1万人程度と見られ、サンフランシスコの3万人以上と比べ、いささか見劣りする展示会となった。
通常であれば、アップルのスティーブ・ジョブスCEOらが行う基調講演。今回は、なんとアップル創業期の開発メンバーが集まった。招聘されたのは、ビル・アトキンソンやアンディー・ハーツフェルドといった伝説的な面々だ。しかし、彼らのスピーチ内容はさほど興味を引くものではなく、しかも最後にはアップルとジョブスへの非難で終わる始末となった。
■教育関連の出展で賑わい

特筆すべきは、iPod関連商品の充実だ。各ブースではiPod用のアクセサリが所狭しと並べられた。加えて専用のスタンドや追加のバッテリー、果ては車載キットなどが多数リリースされ、特にiMac用の美しいスピーカで人気のJBLは、リングケーキのようなiPod専用スピーカーを展示。ユーザーの注目を集めていた。
このような現象は、最初期のアップルの製品では当たり前のことだったし、最近では初代iMacの発表時にも、半透明のアクセサリが数多く揃えられていた状況に似ている。ユーザーがお気入りの製品をさらに心地よく使うための環境が整っているというのは、アップルにとっては喜ばしい状況と言える。
■転換期を迎える

自社の独自技術を駆使し、パソコンを低温に保つ特殊なコンピュータラックを出展していたノランのデビッド・マーチン・マネージャーは、デスクトップのG5が水冷システムとなり、一層プロ向けになったことで出展を決めたという。もっとも、「われわれのような業務向け製品を扱う企業は、今後はこの種のイベントではなく、別なPR手段を考えなくてはならないだろうね。iPodのアクセサリを求めるユーザーは業務用機器にはあまり興味がないようだ」と述べ、iPodやiMacといった商品群と、G5などの上位機種が、それぞれ独自のユーザーを確保していることを示唆した。

アップルは会期直前に、新型iMacの発売が遅れることを認めたが、会期中にはiPodの人気に支えられた売上高が、前年同期比30%増、純利益は同3倍強になったと発表した。iPodの成功は今後も多くのライバル企業の参入を促すだろう。また、ハイエンド機と入門機それぞれにデスクトップとノートというシンプルなラインアップしかもたないアップルは、今後も複数の異なったマーケティングを成功させる必要がある。
困難な作業ではあるが、iPodのヒットで、久しぶりに自社のユーザーと友好的に向き合うことのできる環境が整ったアップル。同社の今後は、非常に期待が持てるのではないだろうか。
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