店頭流通

富士通 パソコンのAV化で新提案 市場成長率プラス5%増狙う

2004/10/11 18:45

週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

 パソコンメーカー各社は、今年の秋冬商戦向けパソコンの市場投入を開始した。今シーズンのキーワードも、「AV(音響・映像)機能強化」だ。大手メーカー各社とも、パソコンのAV機能強化の一環でテレビ機能の強化に注力している。富士通は、デスクトップパソコンで19型の液晶ディスプレイを採用し、大画面・高音質の映像を視聴できるモデルを加えることで差別化を図ったほか、、、

 パソコンメーカー各社は、今年の秋冬商戦向けパソコンの市場投入を開始した。今シーズンのキーワードも、「AV(音響・映像)機能強化」だ。大手メーカー各社とも、パソコンのAV機能強化の一環でテレビ機能の強化に注力している。富士通は、デスクトップパソコンで19型の液晶ディスプレイを採用し、大画面・高音質の映像を視聴できるモデルを加えることで差別化を図ったほか、ノートパソコンでもAV機能を強化した。さらに、パソコンの生き残りを賭けて、家庭内のデジタル機器との連携も視野に入れ始めた。そうした一方で、各社が揃ってAV機能を強化していることで製品の差別化が難しくなり、オーバースペックでユーザーが逃げている、という指摘もある。今年の秋冬商戦の見通しを富士通の伊藤公久・経営執行役パーソナルビジネス本部長(=写真)に聞いた。(田澤理恵)

デジタル家電との連携を

 ──コンシューマ向けパソコン市場が伸び悩んでいる。この傾向をどう見るか。

 伊藤 これまでパソコンは、CPUの速度が向上したり、OSのバージョンアップ、また、デスクトップからノートへの買い替えという流れがあった。ディスプレイをCRT(ブラウン管)から液晶に変更する流れもあり、大きな買い替えの需要があった。今はある程度充実したスペックが揃っており、買い替えのインパクトが少なくなっている。そこで、消費者に新たに魅力あるパソコンとその活用スタイルを提案をしなければならいない。そうなると、時代の流れであるデジタル家電との連携が不可欠だ。

 ──AV機能を強化したデジタル家電に近いパソコンに対し、市場には「そこまでの必要はない」という声もあるが。

 伊藤 VTR(ビデオテープレコーダー)の買い替えにDVDレコーダーを買うというのが普通の流れ。しかし、当社のデスクトップ「FMVデスクパワー」シリーズでは、大容量ハードディスクを搭載し、長時間テレビ番組を録画できる。加えて高音質で視聴できるほか、ダブルテレビチューナー搭載モデルでは、電源オフの状態からすぐにテレビを見ることもできる。

 大画面の薄型テレビの用途はリビングルームが中心なので、AVパソコンは個室で利用頻度が高い小型液晶テレビと競合するだろう。しかし、テレビやDVDが視聴できる利便性は十分訴求できる。ノート型「FMVビブロ」のNXシリーズでもAV機能を強化し、どこにいてもAVを楽しむことができる点にメリットを見出すユーザーもいる。ソフトが入れば何でもできるのがパソコンの良さ。パソコンなしでデジタルカメラの画像をプリンタでダイレクトプリントできるようになったが、デジタル写真の加工は、画像の補正ができるパソコンが一番良い。これらの利便性をいかにアピールするかが、パソコンメーカーとしての新しい用途提案だ。

低価格と付加価値の2極化へ

 ──低価格のショップブランドやBTO(注文生産)パソコンをどうみているか。

 伊藤 メーカー製でも、ショップブランドと同様の低価格設定は不可能ではない。BTOについても、当社は法人向けで注文生産を行っているため、これをコンシューマ向けに応用することは可能だ。しかし、ワープロや表計算だけの限られた機能を必要として低価格パソコンを選ぶユーザーや、ホワイトボックスを選ぶ人々は、最初から大手メーカーの製品は買わないだろう。かつては富士通でも低価格パソコンをラインアップしたが、決してビジネスの中心にはならなかった。大手メーカーは、付加価値を求めるユーザーに高機能パソコンを提供するという方向性であり、ユーザーは2極化していくと考えている。

 ──今年の冬商戦の見通しは。

 伊藤 比較的楽観視している。富士通としては、前年同期比プラスを目標にしていることはもちろんで、市場全体の伸びもプラスになるだろう。当社は市場伸びプラス5%のアップを狙う。パソコンは、もはやどこかのメーカー1社だけが売れるということはない。かつて当社が「スーパーファイン液晶」を搭載したときには、一瞬シェアが伸びたが、すぐに追随された。シェアにこだわるよりも、作り過ぎによる在庫のコントロールがきかなくなることを懸念する。また、適正量を作っておかないと機会損失にもつながる。市場全体が伸び悩んだときに、どこか1社が在庫過剰で値下げすると、価格競争の泥沼に追い込まれる。当社はサプライチェーンマネジメントに力を入れ、次の商戦までに旧商品の在庫を残さず利益を確保していく。
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