拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>7.デジタルカメラ(上)

2004/10/18 16:51

週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載

 1998年頃から、日本市場を筆頭に急速に普及したデジタルカメラ。98年時点では全世界でわずか300万台程度であった市場は、03年終了時点でおよそ5000万台規模の市場にまで到達した。このように目覚しい成長を果たしたデジタルカメラ市場であるが、その将来は必ずしも明るいものではない。(岸本 章 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 すでに日本市場は成熟化が著しく、今後の成長はほとんど望めない。海外に目を転じても、ここ数年間の間に米国、欧州市場の順で成熟期に差しかかり、今後の成長市場として最も有望視されている中国などの途上国市場においても先行きは不透明である。このような状況から、世界のデジタルカメラ市場は08年頃には世界的な成熟期に入り、8000万台から9000万台程度で横這いで推移すると考えられる。

 そもそもデジタルカメラは従来の銀塩カメラの代替だけでなく、その手軽さから、個人財としての普及を目指していたが、カメラ付き携帯電話の普及、その高画素化により、そのシナリオはもろくも崩れ去った。したがって現在では、デジタルカメラは「世帯財」、カメラ付き携帯電話は「個人財」という棲み分けがなされてしまったのである。

 このように先行きが暗いデジタルカメラ市場であるが、その競争環境は激化するばかりであり、デジカメメーカー各社を取り巻く事業環境は非常に厳しいのが現実である。図は、上位のデジカメメーカー各社の利益率を示したものであるが、上位2社のキヤノン、ソニー以外は総じて、利益を確保するのに苦しんでいるのが現状である。近年、中国、台湾のローカルメーカーもデジタルカメラ市場に次々と参入を果たし、日本メーカーにとっての競争環境は厳しくなるばかりである。次回は転換期を迎えた市場において、主要メーカーがとるべき戦略について簡単に論じることとする。
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